子の「不慮の死」防ぐ事業に制約課す厚労省のなぜ モデル事業2年目、改訂された「手引き」で波紋
CDRは欧米発の取り組みで、日本では小児科医らが中心となって導入を訴えてきた。子どもに関わる機関が一堂に集まり、情報と知恵を持ち寄って、死因を究明。そのうえで、予防策まで考えるところに特徴がある。保育園、学校、病院、警察……という多機関の連携こそがCDRの真骨頂だ。
日本で初めての試みは、2020年度からモデル事業として始まり、2年が経過した。主管の厚生労働省は取りまとめを公表していないため、制度化の課題として何が浮かび上がったのかは判然としていない。ただ、2021年夏にフロントラインプレス取材班が独自に行った調査では、「警察」「個人情報」という2つの壁が見えている。
子どもがなぜ死んだのか。それを検証するには、関係者の聴取や現場検証、司法解剖などを手がける警察の捜査情報が欠かせない。
刑事訴訟法47条のただし書きが考慮されていない
しかし、刑事訴訟法47条の「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない」という規定などにより、CDRでは捜査情報が共有されにくい。この条文には「但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、その限りではない」というただし書きがあるが、ほとんど考慮されていないのが実情だ。
個人情報保護の壁も厚い。子どもや家族の個人情報は、遺族が同意しなければCDRで使用できない、というのが一般的な見方だ。遺族が虐待の当事者だった場合、拒否される可能性も高くなる。つまり「警察の捜査情報」と「個人情報」がなければ、目的に沿うレベルで検証を行うのは難しい。
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