米国発「子どもの死の予防制度」日本導入への課題 虐待の防止にも効果、米国は1970年代に導入
厚労省が出した新たな条件に失望の声
藤田香織さん(41)は、横浜市の中心部に法律事務所を構える。弁護士として、数多くの児童虐待事件や少年事件を手がけてきた。現在、日本弁護士連合会子どもの権利委員会事務局次長や、神奈川県児童相談所の非常勤弁護士を務め、CDRとの関わりも深い。
そもそもCDRは、子どもの虐待死を見逃さないようにするために1970年代にアメリカで発祥した歴史がある。日本にこの制度を取り入れようと努めてきた小児科医の中には、藤田さんと同じく虐待問題の専門家も少なくない。
CDRは、医療、警察、教育、福祉など多機関が関わるのが特徴だ。そこで情報を共有し、死に至った経緯を明らかにし、予防策を考える。乳児から18歳未満の子どもの死のすべてを扱う。対象も、窒息や転落など不慮の事故死、交通事故、自死と幅広い。検証には、人口動態調査に用いられる「死亡小票」を利用し、追加情報が必要な場合は、警察や死亡を確認した医療機関に問い合わせる。
ところが、厚労省作成のモデル事業の手引きは、2年目に新たな条件を付け加えた。
CDRを進める際には①遺族の同意が必要、②警察の捜査情報は共有しない、③司法解剖の結果は対象としない、という3点を明示したのである。
検証の質と量を左右する「手引き」。2年度目の変更については、モデル事業に関わった人々から失望の声が上がった。これで、はたして効果的な予防策を打ち出せるのだろうかといぶかしく思うような改訂だ。
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