子の「不慮の死」防ぐ事業に制約課す厚労省のなぜ モデル事業2年目、改訂された「手引き」で波紋
フロントラインプレスの取材班が、2021年夏にモデル事業を行う地方公共団体に対して行ったアンケート調査でも、厚労省の指示で情報を出せないとの回答が目立った。個人情報に関係ない情報も出せないというのだ。
その一方で、厚労省自身は、モデル事業の1年目の総括を依然として公表していない。CDRが国民に浸透しない大きな理由の1つは、こうした“中身を外部に知らせない”という厚労省の姿勢だ、と一杉教授も主張する。
「2020年度のモデル事業の報告書として、滋賀県は100ページ近い報告書を厚労省に送っているんです。(1年目には)7つの府県にモデル事業をやらしているのに、総括をしてもらわないとね。滋賀県のやり方はダメですね、とか、〇〇県のやり方がいいですね、とか。困りますね、やるだけやらせておいて」
日本小児科学会地方会などに圧縮版を配布
滋賀県では1年目の報告書を、個人情報を抜いた圧縮版にして47都道府県にある日本小児科学会地方会などに配った。子どもの死の予防のために、他の地域でも役立ててもらえたら、という思いからだ。
CDRは厚労省の手引きどおりにやらない場合、モデル事業として採用されない可能性もある。そうなると国からの予算がなくなる。それでも一杉教授は「手弁当になっても、手伝ってくれる有志でやるつもりだ」と話す。
4月からの2022年度は、厚労省が当初、CDR本格導入の初年度として目標設定していた年度だ。その実現は後年にずれ込んだ。では、2023年4月に創設予定のこども家庭庁は、CDR推進の大きな動輪になれるのか。本当に縦割り行政の弊害を排し、「防ぎうる死を防ぐ」役割を果たせるのか。子どもの不慮の事故、死亡は、今日も明日も起こりうる。大人たちの本気度が問われている。
取材:益田美樹=フロントラインプレス(Fromtline Press)所属
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