家臣の家康への皮肉が書かれた「三河物語」の中身 「主君を裏切る者が出世している」と憤慨
作:大久保忠教
年:江戸時代前期
構成冊数:3巻
分野:歴史書(軍記物語を意識)
松平・徳川家と大久保家の事績
徳川家康に長年仕えた旗本の大久保忠教は、「彦左衛門」の通称と「天下のご意見番」として広く知られています。『三河物語』は忠教が著した書物で、家康を中心とした松平・徳川家の歴史と、大久保家歴代の事績がつづられています。
全3巻で構成され、上巻は(松平家始祖という建前の)清和源氏の由来にはじまり、初代・松平親氏から8代目である家康の父・広忠まで、中巻は家康の人質時代から織田信長との清洲同盟の成立を経て、信長の比叡山延暦寺の焼き討ちまでが記されています。
下巻は武田家との抗争から本能寺の変、豊臣秀吉への臣従を経て、関ヶ原の戦いでの勝利、大坂夏の陣までが記されています。後半には忠教の子孫に向けた教訓も記されており、下巻は分量が多くなっています。
大久保彦左衛門忠教は、1560年に三河国(現在の愛知県東部)で生まれました。父の忠員(ただかず)は家康の祖父・松平清康から3代にわたり松平家・徳川家に仕えた重臣です。忠教の長兄・忠世(ただよ)は「徳川十六神将」に数えられ、次兄の忠佐(ただすけ)も戦場で活躍し、ともに江戸幕府の成立後は譜代大名となっています。
彼らの異母弟にあたる忠教も、少年時代から松平(徳川)家に仕え、初陣以降は家康の合戦のほとんどに参加しています。いわゆる武断派の武将(武官・番方)の1人であり、戦場における槍働きで家康の信任を得ていきました。
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