NHK受信料問題の解決法は「公共メディア料金」だ インフォメーションヘルスをどう解決するか

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すると民放は面白い番組作りがしにくくなると言う人もいそうだ。だが今の民放の番組は似たようなバラエティだらけで逆に私はつまらない。若年層の視聴率を狙ってだろうが、若者が賑やかなバラエティを好むというのは、私も含めたオールド世代の思い込みだ。自分たちが若い頃に好きだったバラエティを作っても若年層は興味がない。現に視聴率は下がり続けている。どうしてもバラエティが作りたければAmazonなりDMMなりに企画書を持っていけばもっと予算を使えるだろう。「テレビ=公共メディア」になるなら、民放も新しい別の道を考える時だと思う。

民放はNHKのネット活用に何かと「民業圧迫」と歯止めをかけようとしてきたが、もうそんな小競り合いをしている場合ではない。自分たちのやり方を大きく見直しながら、NHKと共に社会的役割を担っていく方向に意思を修正する時だ。「民業圧迫」の主張は封印し、協調路線に転じてもらいたい。

本来は公共メディア料金の輪の中に新聞業界も入るべきところだが、彼らはNHKを蛇蝎の如く嫌っているので無理だろう。団塊世代と共に沈んでいくしかないと思う。

政権と切り離した委員会が必要

NHKの受信料を「公共メディア料金」に転換すると、これで括られるメディアは今までより「公共性」を強める必要がある。この「公共」とは国家とは別の概念だ。「自治」に近い。

現状のNHK経営委員は国会の承認のもと総理大臣が選ぶので、その時点で政権に従属することになる。公共放送のガバナンスとしておかしいのだ。
「公共メディア料金」を仕切る「メディア監理委員会」が必要で、委員は国民が何らかの方法で直接選ぶべきだと考える。選び方は難しいので重々議論が必要だ。

一つの考え方は、「公共メディア料金」を払った人に投票権があり、その投票で監理委員を選ぶやり方だ。これなら一定の公平性が理屈では担保できる。払った人がメディアを視聴する権利もあることにすれば、一貫性が出る。ただこれだと、スクランブル制度と同じになってしまい、誰でもアクセスできる公共性が保てない。

具体的な制度としては難しいが、とにかく政権と切り離した委員会が監理する必要がある。NHK改革のある意味、もっとも重要なポイントになるだろう。

そこまで議論がたどり着くには、この国の進め方だとまた10年くらいかかりそうだ。その間にNHKも民放もダメになるだけかもしれない。だがそれでも、議論すべきだと私は思う。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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