NHK受信料問題の解決法は「公共メディア料金」だ インフォメーションヘルスをどう解決するか

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放送業界のもう1つの課題が民放ローカル局だ。エリアによって差はあるが、キー局の番組を各地域に届けることと、その地域の情報を域内で伝えることの2つの役割があった。ネットの時代になると前者の役割が不要になる可能性が高い。逆に後者の役割は重要になりそうだ。厄介なのが、前者の方がお金になっていたことだ。そもそもローカル局が自社で制作した番組が放送の中で占める割合は多くても2〜3割、平均すると1割程度。収入の7〜8割はキー局の番組を域内で放送するからこそ得られる。

そんな中、2022年度は視聴率が急減し、景気の悪化も加わって赤字になるローカル局が続出すると聞く。これから数年、いやこの先ずっと持ち直す要素は見えない。

この状況ではローカル局はネットへ出ようにも出られないばかりか、その前に潰れてしまうところも出てきそうだ。

ネット展開する余裕がないローカル民放

ローカル民放は民間企業だから市場原理で撤退する局が出るのは仕方ない。とは言え、その地域にメディアがまったくなくなるのは、地域の人々にとって大きな損失だ。

昨年講義した京都産業大学の大学生にアンケートを取ると意外に、「ローカル局はあった方がいい」「ローカル局はないと困る」の回答が合わせて3分の2を超えた。「うちらの周りの情報はないと困る」と言うのだ。近畿一円の学生たちで、滋賀県出身の学生は「びわ湖放送がないと困る」と独立局のことも言っていた。学生たちが「情報」という言葉を使うのが面白い。若い人はネットでもテレビでも「情報」を求める。ニュースで見た事件事故も、情報番組で知った新しいラーメン屋も、どちらも情報であり欠かせないのだ。

ネットの時代になり便利なニュースアプリが普及したが、伝えるのはほとんどが全国的なニュースであり、地域情報は流通しない。民放ローカル局は社会的に必要だと思う。

だがネット展開にはお金が余計にかかる。そこをどうするか、これも実はインフォメーションヘルス上、大きな問題なのだ。

世界のメディアのあり方について調べていくと、ヨーロッパでは公共メディアをPSM(Public Service Media)と呼び、イギリスではBBCだけでなく民放のITVやChannel 4も含まれるという。BBCの運営のために徴収される料金は、民放にも一部が供給されるのだ。

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