第2のウソは、政府支出の財源として徴税は不可欠で、その税金ですべての個人、企業、社会集団が等しく被害を受けるというものだ。豊かな集団や個人への税額を下げることは経済全体に対してプラスの「波及効果」を生むというウソもある。
スペインでは、マドリード州首相が頻繁にこう明言している。「われわれの減税政策で、投資と雇用の増加、社会福祉の改善がもたらされる」。
第3のウソは、政府支出を増やすと借金が増え、経済成長が抑制されるというものだ。
このウソを最も拡散させたのは、ケネス・ロゴフとカルメン・ラインハートの論文である。2人はそのなかで、経済成長を長期的に見ると、大きな負債は成長率を低下させる大きな要因であると主張した。
まず、「政府とは問題の解決をもたらすものではなく、政府自体が問題だ」という考え方自体がおかしい。
特に現代においては間違っている。銀行の腐敗や不正行為に端を発した2007年から2008年の経済危機では、世界的な崩壊を食い止めるのに政府の介入が決定的だったことが明らかになっている。
新型コロナウイルスのパンデミックでも、公共資金の大量注入や公共サービスの拡充が医療崩壊や経済の完全停止を回避するのに不可欠で、基本的な役割を果たしてきたことを私たちは目にしてきた。今世紀最大のこれら2つの危機において、政府は「問題」だったのではなく「解決」をもたらしたのである。
政府自体が問題なのではない
そして第1のウソ「政府支出は何ももたらさないお金の無駄づかいだ」というのも、かなり乱暴なウソである。
2007年に経済危機が起こったとき、各国政府や国際機関はこのウソを使って公的支出を削減しようとした。緊縮政策によって、雇用と経済成長が伸び、債務を減らせるのだと主張した。その根拠として、政府支出を削減しても経済活動にはほぼ悪影響を与えないとする複数の研究を流布した。しかし、政府が支出すると、そのお金は必ず、そして即座にそのまま民間部門の収入となるのだから、この考え方は間違っている。
当時、国際通貨基金(IMF)は、政府支出を1ユーロ減らしてもGDPは0・5セントしか下がらないと試算していた。しかし、のちにそれが間違っていたことがわかった。1ユーロを削減するごとにGDPは1.7ユーロ以上下がっていたのだ。
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