また、データを見れば、たとえばアメリカでは過去20年間で、インフラに費やされた1ドルの公的資金が3.21ドルの経済活動を生み出したことは明白だ。
つまり、政府支出は無駄で、経済になんの効果も与えないというのはウソなのである。実際、医療、教育、年金への支出を減らして大手銀行の救出に公費を割り当てる政策を望む人たちが行った「間違った」計算よりも政府支出によるGDPの上昇ははるかに大きかった。
2番目のバリエーションである政府介入による影響(政府支出によって徴税額が増え、国民の重荷になる)に関するウソも実質的にはありえない。
まず、政府支出の財源は、当然、税金だけでなく借金や通貨創造でも賄える。それぞれの資金調達法のメリットとデメリットには議論の余地があるが、必ず徴税が必要だというのは誤りだ。
むしろ、インフラ、基礎研究、教育、公営企業、ケアエコノミーといったものに対して政府支出をし、そこから富や生産的な経済活動が生まれるなら、その公共投資自体が支出しただけの額を生み出していることになる。政府支出はすべて、GDP、つまり経済主体の所得を増やし、その後、税金となって政府に戻ってくる。このことは、政府支出を嫌うダニエル・ラカリェのような経済学者でも認めざるをえないだろう。
政府支出ではなく金利が問題
経済にとって政府は「問題」だという説の最後の3つめのウソを見てみよう。政府支出を増やすと借金が増え、経済成長が抑制されるというものだ。
財源が適切に確保されていれば、必ずしも政府支出によって借金が必要になるわけではない。また、公債が支出の増加に関係してくるとしても、経済にとって必ずしもマイナスの負担となるわけではない。ときには、まったく反対の現象が起こることもあるからだ。
たとえば長期的なリターンや利益が期待できる投資にもかかわらず融資に頼らないというのは、実にばかげている。投資を抑制することこそが、経済活動や発展のリスクとなることもある。実際に、このウソを主張する人たちの影響で政府の長期投資は制限されてきている。政府支出の必要性を評価し、正しく管理し、適切な方法で実施することは必要だが、通常の支出や投資に対しても同じような制限をかけることは、まったく別の話であり、間違っているといえる。
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