OECDに加盟する18カ国でこの50年間に起こったことを示す最新の研究を見ても、疑問の余地はない。富裕層への税金を下げると、経済活動が活発化したり雇用が増えたりすることはなく、所得格差が広がると示されている。
政府支出を不適切に制限することで、特に不況時にもたらされる2つ目の結果は、両手を縛られた政府が悪化していく経済を立て直すために本当に必要な対策をとれなくなってしまうことだ。2007年から2008年の経済危機の際に実際に起こったように、危機を止め、もたらされた損害をできるだけ小さくする代わりに、雇用と経済活動の破壊が不必要に進んでしまった。
目的が明確でチャンスを作る政府支出は必要
ただし忘れてはいけないのは、これまで何度も述べてきたように、政府支出は適切で、実際に必要で、透明でクリーン、さらには常に評価の対象となるものでなければならないということだ。大事なのは支出自体ではなく、それがもたらすチャンスや目的なのだ。
もし政府が常に財政黒字を維持したり、政府支出を最低限に抑えたりすると、経済はずっと崖っぷちに立たされることになる。なぜなら、すでに述べたとおり、必要なインフラや社会資本が十分にそろっていないと民間投資は利益を生まなくなり、民間の活動の原動力が落ちこむと経済を推進させるメカニズムが働かなくなるからだ。
第3の結果は、まさにその公共資本と、日常的な経済および社会活動に不可欠なサービスの著しい劣化である。特に今回の新型コロナウイルスのパンデミックのような悲劇や衝撃が起こった場合、それは悲惨な状況を招くこととなる。近年の超自由主義のイデオロギーが奨励してきた財政削減や民営化によって、予防、医療、基礎研究といったサービスが不安定な状態に陥ったのだ。
いずれにしても、経済における政府の機能や影響に関するこれらのウソを擁護する声はいまだに大きく、力を持っている。あらゆる公的介入を批判し、税の廃止やすべての公共サービスの民営化を訴える無政府主義イデオロギーは、経済・金融において力を持つ集団が私腹を肥やし、社会への影響力を増大させられるような雰囲気をつくりだすのに好都合だからだ。近年の彼らの影響力と格差拡大と富の集中、これらの3つの間に相関関係があることは疑う余地のない事実なのである。
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