一方で、2010年代になって、「怒りを持って戦え」という運動が巻き起こり、突然60年代に回帰するかのような現象が起きたのです。これはいったいなんなのか、ずっと謎だったのですが、本書を読んで、実はその原因にはSNSがあったのではないかと考えました。
本書には、認知的欲求と感情的欲求について書かれています。認知的欲求は、建設的な社会運動の方向性を示すもので、感情的欲求は「みんなで怒りを解き放て」という運動に当たります。
もちろん怒りが必要な時もありますが、一方的な怒りだけが増幅して、その先に建設的な答えをなにも見いだせない状態になっていることが多いですね。
特にツイッターは、感情的欲求を引き出されやすく、怒りが増幅していきます。我々は、知らず知らずのうちにSNS経由でチャッターにとらわれているのではないでしょうか。
怒ることが気持ちいい、悪を糾弾するのが楽しいという感覚も生まれています。共同反芻とは、そもそも寄り添うためのものでしたが、それを凌駕して、怒りのエンターテインメント化にまで走っているのが現状でしょう。
「妬み」や「怒り」の感情が増大する状況
本書では、フェイスブックを自動的にスクロールして他人の生活を見ている時間が長ければ長いほど、妬みの感情が大きくなると指摘されていますが、まさにその通りです。
日常生活において、他人のキラキラしたパーティーの様子など、目に入るはずがなかったのに、フェイスブックではそれが見えてしまう。そして妬む。一方、ツイッターには、楽しそうな人は誰もいません。全員がイライラして腹を立てているのです(笑)。
この状況が加速していくのを止める手段は、現状ありません。ただ、個人的にどうすべきかを考えれば、まずは、本書に書かれているような現象が、SNS上で起きているのだということを認識することですね。
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