ソニー「音の神様」はメディア対応も神だった 金井ルームでの「完全オーダーメード取材対応」
金井さんのプレゼン資料は膨大で、専門的な内容が書かれているものを最初に使うこともあれば、補足説明として用意されているオーディオの基礎がわかるような初心者用の資料を使うこともありました。またあるときは、映画の好みをヒアリングしたかと思えば、相手の記者が見慣れた映画から適切なシーンを再生したこともありました(実にさまざまな映画の、適切なシーンのチャプター番号まで記憶されていました……)。もちろん旧知のメディアが相手の場合も、それぞれデモンストレーション用ディスクを準備されます。プレゼン資料からデモンストレーションの素材に至るまで、あらゆる対象メディア、記者、ライター、評論家を想定し、途方もない量の準備をされていたのです。
自身の努力不足を疑う姿勢
あるとき、金井さんに「インタビュアーによって内容を変えているのですね。すごいですねー」と言ったことがあります。そのとき「当たり前でしょう?」と、いぶかしげな顔で返されました。私はハトが豆鉄砲をくらったような顔をしていたと思います。金井さんがされていたことは、私の知っている「当たり前」ではなかったのですから……。
金井さんほど、用意周到かつインタビュアーの関心を捉える「完全オーダーメードの取材対応」は、ほかに経験したことがありません。同じ製品カテゴリーで同じメーカーが10年連続ベストバイを受賞したのも、その後聞いたことがありません。商品力の高さがあったのは事実でしょう。しかし、それを外に伝えるための金井さんの努力も大きく貢献していたのは確かです。広報に携わる人間として、尊敬しかありません。
思ったような記事ではなかった場合、メディアの責任にする取材対応者の方がいます。ですが、どのような相手であっても、正確に理解できるよう、可能な限りの準備や伝える工夫ができていたのか。まずは、自身の力不足や努力不足を疑わなくてはならないと、金井さんの姿勢から学びました。
非常に難しい製品であったにもかかわらず、100%以上の理解が得られるよう、全力でメディアの方々に説明されていた姿が今も目に焼き付いています。これからも、金井さんに少しでも近づけるよう頑張りたいと思います。
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