「メンタル強くする方法」多くの人が間違える理由 自分の弱さの中にこそ「新しい価値」がある

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苦しいとき、人はなかなか自分の弱さを受け入れることができません。弱さを認めることで、自分の価値を自分で信じられなくなることを、心のどこかで恐れているからです。

今の社会は至るところで競争が行われ、「競争に勝つこと」「強いこと」や「富や名誉、お金など、たくさんのものを所有すること」を幸せだと思っている人は少なくありません。

あるいは、「社会のために働き、社会の役に立ってこそ、生きる意味や存在する意味がある」と思っている人もたくさんいるでしょう。

そんな社会で、人が自分の弱さを認め、自己肯定感を持つことは非常に困難です。

でも、このような恐れは本当は必要ありません。不完全でも、たとえ何もできなくても、人は存在しているだけで、十分に価値があり、生きている意味があるのです。

自分の弱さの中にこそ、自分でも気づかなかった新しい価値があり、人生の中で本当の強さを得ることができます。

弱さに気づいたとき、人は大きく変わる

私はこれまでホスピス医として、人生の最終段階を迎えた患者さんたちと関わってきました。

人生最大の苦しみを抱え、人が最も弱くなるのは間違いなく「死を前にしたとき」だと思っています。その苦しみを解決することはできず、死から逃れることは誰もできません。

かつて、権力や財力があり、人から頼られる「強い」存在であった人ほど、そうしたものを失い「弱い」自分になっとき、苦しみ、絶望し、生きる気力を失います。

しかし、彼らは本当に弱くなったのではありません。目に見える、わかりやすい強さを失っただけです。

私が関わった患者さんの中に、40代の会社社長さんがいました。商才があり、一代で会社を大きくした彼の周りには、常に人がたくさん集まり、彼は我が世の春を謳歌していました。「自分には何でもできる」と思い、仕事ができない人、お人好しで損ばかりしているような人のことを、心のどこかで軽んじていたそうです。

ところが、肝臓がんを患っていることが判明したとたん、状況は一変しました。病状が進行していたため、仕事を離れると、彼のもとからは潮が引くように人がいなくなってしまいました。

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