「メンタル強くする方法」多くの人が間違える理由 自分の弱さの中にこそ「新しい価値」がある

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部下も取引先も、大切に育ててきた会社すらも失うことになり、最初は腹を立てていました。しかし、「自分の生き方は正しかったのだろうか」と考えるようになり、私にこう話してくれました。

「私は今まで、周りの人間から信用され、愛されていると思っていました。社員とも取引先の人とも、お互いに分かり合えていると思っていたのです。でも、それはおごりでした。みんなが信頼し愛していたのは私ではなく、私が動かしている仕事やお金だったと気づきました。今の私には、何もありません」

そんな中で、この患者さんが気づいたのは、常にそばにいてくれる家族のありがたさでした。この世を去る前、彼がお子さんに残した手紙には「周りの人を大切にできる人間になってください」と書かれていました。

この患者さんは、人生の最後に自分の弱さを知り、認めることで、まったく逆の価値観を持つようになったのです。

弱さを認め、受け入れることで、人はさまざまなことに気づき、さまざまなものを手に入れます。

本当の強さとは何か、本当の自分らしさとは何かを知り、自分の弱さだけでなく、他人の弱さも受け入れられるようになるのです。

自分自身をいたわり自分の尊厳を守る

先ほどの会社社長のように、死が間近に迫った患者さんは、さまざまな後悔や苦しみの中で、初めて自分の弱さに気づき、受け入れ、他人に感謝をしてこの世を去っていきます。

同じように、私たちが元気に生きているうちに自分の弱さを認め、感謝して生きられたら、より後悔のない人生を送れるのではないかと思います。

自分や他人をいたずらに責めるのではなく、頑張ったけれど失敗してしまった自分、完全ではない自分をまずは認めてあげる。それこそが、背伸びすることも強がることもなく、本来の自分の姿で生きられるようになるための第一歩です。

弱いところも強いところもみんなひっくるめて、あなた自身であり、それらすべてがあなたらしさを形づくっています。

そのために私が有効だと思っているのは、「セルフコンパッション(self-compassion)」という概念です。

「自分自身」を意味する「self」と、「思いやり」を意味する「compassion」を組み合わせた言葉で、「ストレスや苦しみを抱えながらも自分自身を慈しみ、前向な気持ちを維持すること、およびそのための方法」を指します。

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