購入者分析で見えた「コンパクトSUV」本当の素質 比較車や購入理由からメーカーの課題も露わに

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結果を見てわかることの1つめは、ヤリスクロスがどっしりと中央にいることである。コレスポンデンス分析の結果は、比較対象との相対でプロットされるため、今回取り上げた7車種の中ではどこにも偏らないオーソドックスな特徴を持つことがわかる。

2つめは、同じくトヨタのカローラクロスで、「親しみ」「実用」「信頼」の近くに位置し、ヤリスクロスとは離れている。トヨタ内でうまく棲み分けできているのは、ミドルサイズSUVである「ハリアー」と「RAV4」のパターンと同様だ。キャラクターを際立たせた車種開発が冴えわたる。

カローラクロス(写真:トヨタ自動車)

3つめは、カローラクロスと比較されることが多いヴェゼル、CX-30だ。「高級」「都会的」「おしゃれ」「洗練」などと近く、「実用」のカローラクロスとは明確に違うイメージを形成している。ヴェゼルとCX-30の比較では、CX-30のほうがよりラグジュアリー、といった結果だ。

最後に、XVはスバル車らしく「安全」「頑丈」「アウトドア」の特徴が出ており、キックスは「環境」との結びつきが強い。ロッキーも「環境」と近くにいるが、これはハイブリッドモデルの追加、それを全面に押し出したテレビCMの影響が強そうだ。

ロッキー(写真:ダイハツ工業)

さらなる激戦が予想される市場の中で

今回は、200万円台を中心価格とした7車種を取り上げた。どこまでを「コンパクト」と定義するかは難しいところはあるが、国産コンパクトSUVはだいたい網羅できているだろう。

2023年は前述のZR-Vに、XVのフルモデルチェンジ版となる「クロストレック」が発売される。また、トヨタは「C-HR」の次期型を示唆する「C-HR プロローグ」を2022年12月に欧州で公開した。

C-HR prologue(写真:Toyota Europe)

また、ルノー「キャプチャー」やフォルクスワーゲン「T-ROC」をはじめ、輸入車にもコンパクトSUVは数多く存在する。世界的に好調なセグメントであるため、今後はBEVの投入もあるだろう。

このような動きからもわかるとおり、SUVの競争はこの先より激化していくだろう。同時に各社の電動化戦略も気になるところだ。個性豊かなジャンルであるだけに、楽しみである。

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三浦 太郎 インテージ シニア・リサーチャー

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みうら たろう / Taro Miura

北海道大学大学院理学院卒業後、インテージ入社。自動車業界におけるマーケティング課題の解決を専門とし、国内最大規模の自動車に関するパネル調査「Car-kit®」の企画~運用全般に従事。

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