睡眠の質が低い人が知らない「腸」の重要な役割 便秘や下痢のときに腸はどうなっているのか

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腸の働きが悪く、ウンチを「出す力」が足りないのが「弛緩性便秘」です。原因は運動不足で、便を出すためにかける腹圧にかかわっているインナーマッスルが弱いことが関係しています。

また、精神的なストレスによって起こるのが「けいれん性便秘」です。自律神経の乱れによって腸を支える筋肉が収縮し、便が出てもポロポロと細切れになってしまい、ウサギのフンのような形になることもあります。

さらに、肉が好きで野菜が足りない、ダイエットのために食事量が少なすぎるなど、偏った食事によって起こる「食事性便秘」、便意があってもトイレに行けないなど、我慢することで感覚が鈍くなってしまう「直腸性便秘」などもあります。

女性に便秘の人が多い理由は、ダイエットの影響や男性に比べて筋肉量が少ないことなどが考えられます。また、高齢者の場合は加齢により、腸内細菌のバランスが崩れやすくなることが影響しています。

便秘改善には3つの力が必要

便秘改善には、食事によってウンチを「つくる力」、腸内細菌の助けを借りてウンチを「育てる力」、そして最後にウンチを「出す力」の3つが必要です。

ずっと便秘が続いていると、それがよくないということにさえ気づかなくなってい人もいるようです。それこそが、大問題といえるかもしれません。

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一方、比較的男性に多い「軟便・下痢」の悩みも深刻です。精神的なストレスによる場合が多いのですが、出勤中などに“もよおす”ことが多いため、駅などでトイレの確保が必須。その瞬間がいつやってくるかわからないため、「こわくて急行電車に乗れない」という状況から、こちらは「各駅停車症候群」。電車の中で脂汗をかきながら次の駅を待つ......というつらさは経験した人にしかわからないといいます。

下痢は冷えやお酒の飲みすぎなどで起こることもあり、とくに飲酒の後に起こる場合は、腸が“早く排泄しようとしている”と考えることもできます。

便秘と下痢は別々の悩みのようですが、どちらも便通異常の一種です。あまりに繰り返すようなら受診すべき場合もありますが、腸活に取り組むことで解消できる場合もあります。心おだやかによい眠りに至るためにも、便通の対策を怠らないことです。

辨野 義己 一般財団法人「辨野腸内フローラ研究所」理事長

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べんの よしみ / Yoshimi Benno

国立研究開発法人理化学研究所名誉研究員、十文字学園女子大学客員教授、日本微生物資源学会名誉会員。1948年、大阪府生まれ。酪農学園大学獣医学部卒業。東京農工大学大学院獣医学専攻科を経て、理化学研究所に入所。2009年、同所バイオリソースセンター微生物材料開発室室長を経て同所科技ハブ産連本部辨野特別研究室特別招聘研究員。2021年3月末退職後、現在に至る。1982年、東京大学農学博士学位授与。半世紀にわたって腸内細菌の分類と生態に関する研究を続けている。

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