是枝監督も訴える「映画界のハラスメント」の深刻 2022年はハラスメントに関する報道が相次いだ
業界でも少しずつこの現状を改善しようという動きが始まっている。業界大手の東宝は今年5月に『ブラックナイトパレード』のメインスタッフを対象としたハラスメント研修を実施したのをはじめ、今年11月には、映画の制作現場におけるハラスメント行為の抑止・対応のために「ハラスメント研修の実施」「通報・相談窓口の設置」を決定。
今年12月以降に撮影が開始されるすべての東宝主体の製作作品について、撮影開始前に「ハラスメント研修」を実施することとなり、そして万が一ハラスメント行為が発生した場合には「通報・相談窓口」を設置し、対処するということを宣言している。
また文化庁の「令和5年度 概算要求」には、ハラスメント防止対策講習などへの支援として、作品や公演単位で実施するハラスメント防止対策に必要な経費、作品・公演単位で75件×上限20万円が新たに盛り込まれることとなった。来年の政府予算案にこちらの要求が織り込まれるかどうかはこれからだが、ハラスメント対策の第一歩として注目したい取り組みだ。
「インティマシー・コーディネーター」の導入も
また近年では、俳優の露出が必要とされるシーンについて意思疎通を行う「インティマシー・コーディネーター」や、「リスペクト・トレーニング」と呼ばれるハラスメント防止策など、快適で安全な撮影現場をつくりあげるための事案が次々と導入されている。
さらに冒頭にも記したが、日本全国の芸能従事者が労働者災害補償保険(労災保険)に加入するための窓口としての特別加入団体「全国芸能従事者労災保険センター」も2021年に設置されている。それに合わせてその母体法人となる「日本芸能従事者協会」も設立されている。
「全国芸能従事者労災保険センター」では全国の芸能従事者がオンラインで労災保険に個人加入できる仕組みとなっており、芸能業界の安全研修や待遇改善の活動を行っている。政府が運営する保険であるため補償が手厚いのが特色で、社労士による電話相談など充実したサポート体制をとっている。
この仕組みはもともと労働者災害補償保険法の特別加入制度として制定されていたものであったが、近年の働き方の多様化にともない、事故や通勤災害が多いフリーランスで働く芸能業界の人にも適用できないかという機運が高まったもの。加入対象者としては、俳優・舞踏家・音楽家・演芸家、スタントなど芸能実演関係者、および監督・技術・アシスタント・マネジャーなど、芸能製作関係に従事する者が対象となっている。
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