「僕は今、28歳。奨学金の返済は450万円残っています。この間、結婚を考えている彼女の両親に挨拶に行ったところ、お義母さんに『借金持ちの人と結婚して、娘が幸せになれるわけがない!』と、目の前で大号泣されてしまいました。苦境から抜け出すために、奨学金を借りて大学まで進んだのに、ろくでなしと結婚するかのような扱いをされて、非常にショックを受けました」
大学生の2人に1人は奨学金を借りて大学に進学している時代になったが、一方で「奨学金=良くないもの」というイメージは長年、変わらない。返済当事者の中には「自己投資」と語る人も増えてはきているが、第三者からしてみればその選択は「ありえない」と思われることもある。
東北出身で、現在は千葉県に住む海野雄平さん(仮名・28歳)は、奨学金を借りて以降、周囲とのギャップに何度も悩まされてきた男性だ。
大学進学に「賭けよう」と思った
「僕は2人きょうだいの2番目。高校に入学するタイミングで、3歳年上の姉が高校を卒業して働き始めたのですが、当時はリーマンショックで相当就職に苦労しているのを見てきました。一方で、東京都が夏季オリンピックを誘致している時期でもあったので、2020年に東京オリンピックが開催されれば、自分が大学を卒業する頃には日本の景気もよくなって、就職先も増えるのかなと考えたんです。そこで、思い切って奨学金を借りて大学に進む決断をしました」
海野さんは私立の高校に通っていたが、とくに家庭は裕福というわけではない。奨学金を借りた理由も経済的なものだった。
「父はもともと会社勤めだったのですが、長年やりたかった海外ボランティアの夢を叶えるため、海外で日本語講師になりました。それに伴い、僕たち家族も2年間海外に住みました。僕が中学生の時のことです。
ただ、帰国後の父に国はとくに仕事を支援してくれるわけでもなかったため、定年に近い年齢になってアルバイト勤めに。
姉と自分も海外暮らしが影響して帰国後は学校の勉強についていけなくなり、ともに学力をあまり必要としない私立の高校に進みました。その費用も県の社会福祉協議会から借りたお金で賄いました」
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