これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。しかし、さまざまな要素が絡まっている以上、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しく、また「借りない」ことがつねに最適解とも言えない。そこで「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で幅広い当事者に取材。高校生が今後の人生の参考にできるようなリアルな事例を積み重ねていく……。
そんな想いで始まった連載「奨学金借りたら人生こうなった」が『奨学金、借りたら人生こうなった』として書籍化された。本稿では書き下ろしの1つである「奨学金報道変遷」から一部抜粋・加筆して前後編でお届けする。
近年、なにかと叩かれがちな奨学金制度だが、このバッシングの波はいつから始まったのだろうか。
この記事では、雑誌の図書館・大宅壮一文庫で過去の「奨学金」に関する週刊誌を読み解きながら、雑誌報道の変遷を振り返っていきたい。
1940年代には日本の奨学金制度のスタンスが決まっていた?
そもそもの話だが、奨学金という制度はいつからあるのか。それは第2次世界大戦中からである。
「戦中にいったいなぜ?」と思ってしまうが、太平洋戦争終盤にあたる1943年に文部省(当時)の特殊法人「財団法人大日本育英会」が設立されたことで、日本政府の奨学金制度は始まる。
これによって、経済的理由で就学が困難な高校生、大学生、大学院生に対して、学費を奨学金として貸与することになった。
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