“セッシュ”という言葉は、1958年に映画「戦場にかける橋」で日本人初のアカデミー賞ノミネート俳優となった早川雪洲に由来する。上背のあるアメリカ人たちと渡り合う、精悍な斉藤大佐役を表現すべく、ときに「雪洲(セッシュウ)を大きく見せるため踏み台に立たせてくれ」という指示が飛んだという。この「雪洲を~」との表現は次第に簡略化され、「セッシュウする」「セッシュする」となり、やがて“(背の低い)被写体をかさ上げする”という意の業界用語として広まっていく。
結婚写真など、異性が並んで写真を撮る場合、新郎を“セッシュして”新婦より高身長に見えるようにするケースは、ことさらに多い。
「よく考えれば、なるべくスリムに見えるように“少し斜めから撮る”みたいに、見栄えのいい写真にするための1テクニックにすぎないのにね。当時の自分は隠していたコンプレックスをひょい!とつまみ上げられたような、そんな気がしたんです」
背の低い男は筋トレにハマる?
雄一さんの身長はジャスト160センチで、163センチの結美さんと大差はない。
けれど、彼女がドレスに合わせて少し高めのヒールを履けば、たちまち露骨な身長差がついてしまう。自分のせいで妻に居心地の悪い思いをさせたり、おしゃれを我慢させたりするとしたらいたたまれない。結美さんは、雄一さんが婚活を始めてから10年後にようやく縁を得た、とても大切な人なのだ。
少しでも悲しませたくないのはわかるが、彼女がそこまで身長にこだわる人なら、そもそもお付き合いは始まらなかったのではないか。
「そのとおりなんですけどね。これは完全に“背の高い男になれなかった自分”の被害妄想です。でもね、背の高さだけはどうにもならないじゃないですか。なんだかんだ言って“身長カースト”ってあると思うんです。やせたければ身体を絞ればいいし、太りたければ食べたり筋肉をつければいい。実際、背の低い男は筋トレにハマッて“筋肉で身長の敵を取る”みたいな人も多いですよね。水道橋博士さん(161センチ)とか、西川貴教さん(161センチ)とか、武田真治さん(165センチ)とか。みんな格好いいし、それはそれでいいと思いますが、身長だけは鍛えても伸ばせません。
中学生のころ、“女性にモテるってどんな男だろう?”って意識し始めたとき、やっぱり背が高いって大事な条件だよなって思ったものです。努力しても満たせない条件があるんじゃ、自分は女性から見た“格好いい男枠”には入れないんだなって、こじらせていました」
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