3つの付加価値「便利、リスク減、感動」のつくり方 人間の感情「22ステージ」を上に持っていく

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2.リスク軽減価値=つらい感情を感じるリスクを減らせる価値

これは、「リスクを減らしたい」というニーズを満たす価値です。例えば、私たちのパソコンに入っているセキュリティソフトはこの価値を満たしています。もし、パソコンがウイルスに感染し、情報漏洩が起きたとします。そのとき、私たちは「悲観、落胆、絶望」という感情を持つでしょう。

そして、「将来またこんなことが起こったとしたら、とんでもない目にあってしまう」と考えます。それを避けるために、セキュリティソフトを購入して、必ずアップデートするようになるでしょう。このときセキュリティソフトは、将来、同じようなつらい感情を抱くリスクを減らしてくれる製品として購入されるのです。

3.感動価値=今より高い位置の感情を味わえる価値

感動価値は、先ほどの鍼灸整骨院に通うAさんのように、「腰が痛くてつらい」から「痛みが和らいで最高に幸せ!」というように、今より高いステージの感情に心が動くこと=感動に対して感じる価値です。

前述したように、人が感じる付加価値の最小単位は「感動」なのです。私は、この感動価値こそ、3つの付加価値の中で最も重要であると考えます。置換価値やリスク軽減価値と異なり、感動価値は「その人がまだ感じたことのない感動」がベースになっています。

そのときに感じるのは未知の価値であり、他の2つの価値よりも高付加価値になるからです。そのため、付加価値をつくるためには、感動価値に対する潜在ニーズを探索していかなければなりません。その潜在ニーズを知るためには、実際にお客様に会い、お客様と一緒に感動を体感することが重要です。

お客様のニーズを確実につかむために

某大手日用消費財メーカーのマーケティング担当者の話です。同社のマーケティング部長Bさんは、自社商品が売られているお店に週3日ほどの頻度で足を運ぶそうです。そこでBさんは「お客様の観察」をするのです。

「マーケターは、お客様が商品を買う瞬間を見なければならない」という信念を持つBさんは、自社商品にお客様がどのような反応を示すのか、どのような購買行動をとるのかを、自分の目で見ることをルーティンにしているのです。

あるとき、来店した女性が同社のシャンプーをいったん手にとって、しばらく見ていたものの、結局棚に戻してしまったそうです。その女性は、年齢的にも雰囲気的にも、その商品のユーザーとしてペルソナ設定したイメージ通りの女性でした。にもかかわらず、買ってくれなかったのです。

Bさんは、「すみません、なぜ今このシャンプーを手にとってから、棚に戻されたのですか?」と、女性に(事情を説明したうえで)直接聞いたところ、「パッケージに『健康な地肌を保つ』と書いてありましたが、私はあまり地肌を気にしていません。私が気になっているのは『髪のつや』なんです」と答えたそうです。その女性にとって、Bさんたちが吟味検討して打ち出した「地肌」というキーワードは「価値がなかった」のです。

一般的に、日用品などは、パッケージに書かれている特長や成分、用途や使用法などが読まれて、購入の判断がされます。マーケターが必死に考えてパッケージに表示した情報が、購入の決め手になります。Bさんが、女性との会話をマーケティングの参考にしたのは言うまでもありません。

付加価値のつくりかた
『付加価値のつくりかた』(かんき出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

マーケティングの知識や手法を解説している本は、世の中にたくさんあります。単に手法を知りたければ、それらを読めば済むことです。しかし、マーケターに求められるのは、知識や手法を学ぶことだけではありません。

お客様が商品を買う瞬間、使う瞬間、実際に使って役に立って感動する瞬間に立ち会うこと。そしてこれらの経験を積み重ねていくことが本当に求められることなのです。

もしその瞬間に立ち会って、お客様の感動を体感できたなら、その商品の何をメインに訴求すればいいのか、どんなキャッチコピーがいいのかなど、「ヒント」が見つかるのです。

お客様の真のニーズを見つけ出すために、ぜひ、机上ではなく現場に足を運びましょう。

田尻 望 株式会社カクシン 代表取締役 CEO

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たじり のぞむ / Nozomu Tajiri

京都市出身。大阪大学基礎工学部情報科学科卒業後、キーエンスでコンサルティングエンジニアとして重要顧客を担当。また販売促進技術、海外販売促進技術に従事。その後、研修会社の立ち上げに参画し、独立。社会変化に適応した企業の長期的発展を目指す。著書に『構造が成果を創る~価値を構築するストラクチャリング思考と手法』(中央経済社)、『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』(かんき出版)

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