3つの付加価値「便利、リスク減、感動」のつくり方 人間の感情「22ステージ」を上に持っていく

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ニーズの裏側にある「感動」を提供することが重要(写真:EKAI/PIXTA)
人間の感情には22のステージがあるという考え方があります。それを上に持っていくことがビジネスにおいて付加価値を提供することにつながります。キーエンス出身の経営戦略コンサルタント田尻望氏の著書『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』より一部抜粋・編集して、「感情のステージを上に持ち上げる」方法について解説します。

ニーズの裏にある付加価値の最小単位

お客様に付加価値を提供するうえで、顕在ニーズはもちろんのこと、お客様も気づいていない潜在ニーズをつかむことが非常に大切です。少し視点を変えて、それらニーズの裏側に潜んでいるさらに重要な要素について考えてみましょう。その重要な要素とは、人が大きく心動かされること、すなわち「感動」です。

私は、人が感じる付加価値の最小単位は「感動」だと考えています。相手の真のニーズを叶えたとき、感動が生まれるのです。感動とは、簡単に言ってしまえば「感情が動くこと」です。

みなさんは「エイブラハムの感情の22段階」をご存知でしょうか? これは、人間の感情には22のステージがあるという考え方です。上のほうが、喜び、情熱、希望などのポジティブな感情で、段々と下に行くにつれて、失望、落胆、不安、恐怖などのネガティブな感情になっていきます。

『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』P75より

人は、感情が、下から上のステージに動いたときに感動を覚えるのです。ここで重要なのは、人は、感動、感情の動きが得られることに対して価値を感じ、お金を支払うということです。

苦難や挫折によって意気消沈、絶望、落胆した状態から、もう一度、満足、幸福、喜びを感じられるようになりたい。そのためなら出費もいとわないのです。

一つわかりやすい例を挙げて説明しましょう。一般的な鍼灸整骨院の料金は保険治療であれば、施術時間にもよりますが、1回600円〜700円で済みます。週1回のペースで通ったとしても、半年で1万5000円程度です。

ところが私の知り合いで、鍼灸整骨院にかなりの頻度で通い、半年で10万円以上使う男性Aさんがいます。Aさんは孫もいる年齢で腰痛持ちなのですが、とはいえなぜそこまで鍼灸整骨院にお金をかけるのでしょうか? それは、Aさんはこう考えているからです。

・鍼灸整骨院で治療を受ければ腰痛が和らぐ

・つらい腰痛が和らげば仕事にも集中でき、可愛い孫を思い切り抱っこできる

・その喜びと感動を味わうためには、半年で10万円支払っても高くはない

腰痛で孫を抱っこできなくて悲しい、つらいという思いが、腰痛を改善すれば、思う存分孫を抱っこして、「ああ、最高に幸せだ!」という感情に変わる。その感動を味わうことがAさんにとっての高い付加価値なのです。

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