20万円で買った古民家に住む男「自給自足」の現実 お金にも文明にも頼らず生きるとはどういうことか

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家の西側を流れる沢を120メートルほど登ったところに、かつて村で使っていた共同の水源の跡がある。水源は伏流水の湧き出しで、この村で一番良いものは水だといえるくらいきれいである。ただ、現在は湧水の場所が昔より少し下流にずれてしまい、かつて使われていたモルタルの水槽は使用することはできない。最初は、とりあえず沢の水を放置されていた梅酒用の大きな瓶に汲む、水汲み生活から始まった。

天井に竹を渡し、その竹によしずを載せるようにして、崩れ落ちてくる茅を仮に受けた。ストーブも、水も、天井の処理もなにもかも仮だが、山奥で廃屋寸前だった古民家が、少しずつ息を吹き返していくのがわかった。

テレビ4台、冷蔵庫2台、洗濯機1台、照明器具無数、ラジカセ、その他もろもろが、屋内のあちこちに転がっていた。木製のものは薪にするつもりだが、電気製品やプラスチックなどの無機物はやっかいである。動く動かないは調べず、すべて捨てることにした。100ボルトの電気を引く予定はないので、電気製品はほぼすべて使えない。

古民家で自給自足生活をしたいあなたへ

大工道具や農具、古い建具、古い家具、天然繊維の布団は残すことにした。100年前と同じ生活道具は、燃えるか土に返るものだ。昔からある古い道具と、ここ20年ほどの電気製品やプラスチックを分けていると、世界中が石油由来のガラクタだらけになっていることを実感する。

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夏本番を迎えた頃、個人では処理できないものを廃品回収業者に回収を頼んだ。4トントラックに積み放題で6万円という触れ込みだったが、結局、テレビや冷蔵庫などの特殊機器は廃棄処理にお金がかかるため別料金を請求され、なんやかんやで全廃品の引き取り料金は11万円だった。

薪にならない可燃物は、廃村に転がっていたドラム缶を、庭まで転がしてきて、ツルハシで叩いて穴を開けて簡易的な焼却炉にして、少しずつ燃やすことにした。

自給自足で暮らしていた時代に建てられた家(=古民家)は、自給自足がやりやすいようにできている。沢水や井戸水を使い、薪を屋内で燃やして生活できるように設計されているからである。現代的な家屋では、カマドで煮炊きしたり、薪でお風呂を沸かしたりするのは難しい。自力で生活しながら快適に生きるには古民家を現代風にリフォームすることなく、昔のまま使うのがよい。

服部 文祥 登山家、作家

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はっとり ぶんしょう / Bunsyo Hattori

1969年生まれ。世界第二の高峰K2などに登頂したのち食糧を現地調達する「サバイバル登山」を開始。著書に『サバイバル登山家』『狩猟サバイバル』『サバイバル登山入門』『息子と狩猟に』『サバイバル家族』『You are what you read』など。

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