「自民・国民民主」連立説が示す岸田政権の深い危機 真偽不明の怪情報?与野党に広がる複雑な波紋

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こうした状況も踏まえてか、当事者たちの表舞台での反応は、否定一色となった。岸田首相は2日、官邸での記者団の質問に対し「どこからそういった情報が出たのかは知らないが、私はまったく知らないし、私自身考えていない」と強い口調で否定した。

山口那津男・公明代表も国会内で記者団の取材に応じ、「まったく聞いたことがないし、わが党幹部からもそういう話を聞いたという報告もないので、検討のしようも、判断のしようもない」と言い放ち、玉木氏も記者団の取材に「大変驚いている。報道されているような事実はない」と言下に否定した。

その一方で、泉健太・立憲民主代表は遊説先で記者団に、「(国民民主は)国会対応で与党と非常に近い選択をしている政党だと認識しなければならない」と指摘。馬場伸幸・維新代表は遊説先で記者団に「国民民主は、完全に与党としての動きをしている。中途半端なことはやめ、与党入りすればいいのではないか」と皮肉交じりで冷笑した。

「連立見直しは政権弱体化につながる」との見方も

そもそも、こうした意味ありげな風説がまことしやかに流れる状況自体が、岸田政権の危機の根深さを物語る。

ただ、自民党内でもいわゆる反岸田勢力の「岸田離れ」は収まらないが、それが「岸田降ろし」の動きにはつながっていない。それだけに、“辞任ドミノ”を抱えながらなんとか臨時国会を乗り切れた岸田首相にとって、「連立組み直しはさらなる政権弱体化につながる」との見方は多い。

岸田首相は「年内に問題閣僚などを更迭するミニ改造を断行できれば、政権は当分安泰との考え」(岸田派幹部)とされ、臨時国会閉幕と2023年度予算案の策定作業が軌道に乗れば、「今回の風説は、師走の寒風に吹き流されて消える」との声が広がりつつあるのが実態のようだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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