W杯ベスト8が決定!進出国が抱える"お国事情" ブラジル、モロッコ、クロアチア等の政治問題

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一方で、資源と農作物が豊富なブラジルにあって、かつての資源・食料価格高騰を背景に貧困層へのバラマキで「人気を買った」前のルラ政権と同じ手法は、世界的な物価高や不況の中では繰り返せないという見方が強い。

2014年サッカーW杯や2016年のリオデジャネイロオリンピックを誘致し成功に導いたルラ氏の豪腕に期待する国民は多い。だが、経済面で成果を出せなければ、特に支持基盤である貧困層の失望は大きくなり、政権を揺るがしかねない。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、食料と資源価格が高い状況は同じだが、前政権期と違ってブラジルの経済成長は鈍化しており、ルラ氏は任期早々から瀬戸際の対応を迫られることになる。

中国と接近するアルゼンチン

ブラジルの隣国アルゼンチンも2019年の大統領選で左派のアルベルト・フェルナンデス氏が勝利した左派政権の国だ。副大統領のクリスティナ・フェルナンデス氏は2007~2015年に大統領を務めていたが、憲法規定で大統領再出馬ができず、副大統領としてアルベルト氏とチームを組んで立候補した。

南米での覇権拡大が懸念

ちなみにクリスティナ・フェルナンデス氏の夫のネストル・キルチネル氏も、2003年~2007年に大統領を務めた。

ミュージカルやハリウッド映画の題材にもなったエビータを妻に持つ、元軍人フアン・ペロンが1940年代半ばに創設した正義党(ペロン党)による政権掌握が、2015~2019年の中道右派マクリ政権期を除いて続いている。

正義党政権下で顕著なのが、中国との近さだ。貿易や投資の拡大はもちろん、中国は南部パタゴニア地方のネウケン州に宇宙観測施設を建設し、2018年から運営している。中国による軍事基地との見立てもあり、南米での覇権拡大が懸念されている。

「コロナ後」も不況に苦しむ欧州諸国

残りのオランダ、イングランド、フランス、ポルトガルはいずれもヨーロッパ諸国だ。コロナの沈静化に伴う行動制限の解除や、それに伴う南欧諸国の飲食業や観光業の回復で、ユーロ圏のGDPは改善したが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、展望は暗い。

ロシアがドイツ向けのパイプラインのノルドストリームを完全に停止し、天然ガス供給が止まったことにより、欧州のエネルギー市場は大きく揺さぶられた。厳寒の冬場には電力需要が増大するため、電気料金はかなり高額になることが予想される。

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