W杯ベスト8が決定!進出国が抱える"お国事情" ブラジル、モロッコ、クロアチア等の政治問題

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国王が強い権限持ち、領土争い抱えるモロッコ

次に、優勝候補の一角スペインをPK戦で下したモロッコを紹介したい。アフリカ大陸の北西に位置するモロッコは1912年にフランスなどの保護領となったが、1956年にフランスから独立した。イスラム教を国教とする立憲君主制を敷き、国王が強い権限を持つ。現国王は1999年に即位したモハメド6世。親欧米が基本路線で、日本との関係も良好だ。

人口は約3730万人。公用語はアラビア語とベルベル語で、フランス語も広く通じる。鉱物資源が豊富な西サハラの領有権を主張しており、2020年にはアメリカのトランプ前政権が西サハラの領有権を承認する見返りにイスラエルとの国交正常化に合意した。

今年3月には歴史的に影響力の強いスペインも西サハラ領有を主張するモロッコの立場支持を初めて表明。住民投票の実施を訴えてきた従来の姿勢からの歴史的転換となった。また、地理的に気候変動の影響を受けやすく、今年は「過去40年で最悪」とされる干ばつに見舞われた。ヨーロッパに隣接しているため、アフリカや中東からヨーロッパに密航しようと狙う不法移民の流出拠点の1つでもある。

ブラジルはルラ氏が返り咲き

左派政権返り咲きのブラジル

優勝候補筆頭のブラジルでは今年、右派から左派への政権交代が決まった。10月30日の大統領選決選投票で、2003~2010年に大統領を務めたルラ氏が現職のボルソナロ大統領を破って返り咲きを決めた。

ルラ氏は在任中、手厚い貧困対策で高い人気を誇ったが、退任後に汚職疑惑で追及を受け、2018~2019年に収監された経験もある。過激な物言いで知られるボルソナロ氏は「ブラジルのトランプ」とも呼ばれ、新型コロナ感染防止策を軽視したことで批判を浴び、再選を果たせなかった。

ルラ氏の新たな任期は2023年1月1日から4年間。中南米最多の面積と人口を抱えるブラジルで左派政権が誕生することで、中南米のほぼ全ての主要国を左派首脳が率いることになる。

伝統的にアメリカの影響力が強い中南米が反米色の比較的強い左派政権で占められることにより、アメリカ中心の世界構造はさらに揺らぐ。中国の覇権拡大を一層招くとともに、ウクライナに侵攻したロシアのように自国優先主義を伸張させる国がさらに出てくる懸念も高まっている。中南米での相次ぐ左派政権誕生はアメリカの影響力低下を象徴する出来事と言える。

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