森保監督の続投有力、そのメリットとデメリット 路線継続で4年後の8強は叶うのか?

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もう1つのメリットは経済的側面。日本サッカー協会が外国人監督を招聘する場合、単に年俸を支払うだけにとどまらず、コーチ陣や通訳、住居などの負担が生じる。だが、2020年からのコロナ禍で無観客試合や観客制限下の代表戦開催を余儀なくされ、協会の収支が急激に悪化。2021年度の決算(1月1日~12月31日)は、収入が約180億円、支出が約197億円で、約17億5000万円の赤字を計上している。

2021年度から4年間で合わせて約80億円の赤字が出るという見通しもあり、彼らは2002年日韓W杯の収益を有効活用して購入した自社ビル・JFAハウス(東京都文京区)を今年3月に売却。財政面の立て直しを図っている。そんな時期に多額の費用がかかる外国人指揮官を招聘するのはやはり厳しい。田嶋幸三会長が「森保監督は次期監督の有力候補」と強調するのも、こうした背景があるのだ。

一方、森保体制継続のデメリットに目を向けると、同じ評価基準での選手選考や起用が続くため、チームが膠着し、成長が停滞する恐れがある。それが一番怖いところだ。

東京五輪世代の重用・固定化が懸念要素

例えば、大会でメンバー落選した大迫勇也(神戸)や原口元気(ウニオン・ベルリン)らの今後の扱いは気になるところ。2人は「監督が代わればまた選ばれる可能性がある」と考えているが、若返りに舵を切った森保監督は今後、上田綺世(セルクル・ブルージュ)や旗手怜央(セルティック)といった同タイプの若い世代を重視するはず。カタールW杯参戦組、あるいはその代表候補だった東京五輪世代の重用・固定化が進めば、30代のベテランや森保監督に呼ばれたことのない選手にとっては逆風になりかねないのだ。

2018年から2026年までの8年間継続となれば、日本サッカー界では異例の長期政権。森保監督の発言力が強くなり、正しいチェック機能が働かなくなる危惧もある。もちろん、つねに謙虚で聞く力の高い森保監督が理不尽な振る舞いをするとは思えないが、権力一極集中の可能性がある状況は避けなければいけない。契約期間の短縮、協会側の評価体制強化などを含め、改善策を講じていく必要があるだろう。

とにかく重要なのは、いかにして4度跳ね返された8強の壁を破るかだ。それができる指揮官は一体、誰なのかを冷静に見極め、判断していくことが肝要だ。

森保体制の日本は確かにドイツやスペインに勝ったが、コスタリカには負けている。最終予選でもオマーン、サウジアラビアに2敗し、東京五輪でもメダルを獲得できなかった。そういったマイナス面も踏まえつつ、冷静に分析・検証し、最善の方向性を見出すべきである。

今は森保監督のここまでの働きをねぎらいたいが、もしも続投する場合には、カタールW杯よりも確実に勝てるチームを作ること。それを強く求めたいものである。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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