森保監督の続投有力、そのメリットとデメリット 路線継続で4年後の8強は叶うのか?

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クロアチア戦でPKを外した南野拓実(モナコ)に対しても「PKを1番に蹴ってくれてありがとう。この大会で大変な役回りになったけど、嫌な顔一つせずにチームを支えてくれてありがとう」とホテルへの移動バスに乗る前にサラッと声をかけたというから、森保監督の日本人らしい気配りが窺える。

さらに言うと、南野は2020年1月から世界的ビッグクラブであるリバプールに加入。エジプト代表FWモハメド・サラーらタレント軍団の中に身を投じ、試合出場機会が激減。代表でも微妙な立場に追い込まれた。そんな背番号10に対し、森保監督は「ビッグクラブに挑戦して試合に出れなくなった選手が呼ばれなくなると、後に続く日本人選手がビッグクラブに挑戦できなくなる」と南野に語り、背中を押し、代表招集を継続したのだ。

最終予選でゴールから遠ざかった彼に対してはさまざまな批判も渦巻いたが、指揮官は絶対に外そうとはしなかった。カタール本番は今季欧州で12ゴールと絶好調だった鎌田大地(フランクフルト)を重視したが、南野をクロアチア戦の重要局面で投入。その采配を見ても強い信頼が分かるだろう。

つねに選手の立場を考えた配慮や心配りができる代表監督はそうそういない。ここまで森保ジャパンに参戦してきたメンバーの大半はやりやすさを大いに感じているはずだ。

若手コーチの抜擢加速へ

森保監督体制継続の2つ目のメリットは若い次世代コーチの引き上げがスムーズに進むこと。新体制に移行した場合、現在の横内昭展・上野優作コーチら数人は退任が確定的。横内コーチはジュビロ磐田、上野コーチはFC岐阜監督就任が濃厚と言われる。そして代表のほうは40代の若い指導者が抜擢される流れになりそうだ。

世界を見渡せば、ドイツの名門、バイエルン・ミュンヘンを指揮する35歳のユリアン・ナーゲルスマン監督を筆頭に、若い世代の指導者が頭角を現しているが、日本は若返りのスピードが遅い。それを加速すべく、協会は現役引退したばかりの元代表選手を「ロールモデルコーチ」として雇用。内田篤人、中村憲剛、阿部勇樹というW杯経験者が年代別代表で指導している。彼らのように世界基準を知る元トップ選手が近未来の代表監督候補として育っていかなければ、日本の大きな飛躍はあり得ない。森保監督続投が環境改善の一助になるならば、プラスと言っていい。

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