NHKの次期会長が「日銀出身者」に決まった事情 前田会長に近しい人物は「ノー」で急転直下
そもそも前田会長と官邸、そして自民党との間には、埋めがたい溝があった。NHKの経営委員会の委員は衆参両院の同意を経て任命され、業務執行の責任者であるNHK会長はその経営委員らが決めている。NHKに関する重要な施策は総務省や政治の意向を仰ぐのが不文律でもある。
だが、前田会長のやり方は違った。2020年1月の就任後、「スリムで強靱な新しいNHK」をテーマに管理職の3割削減や、職員の昇進や昇格プロセスに関する人事制度改革に着手。その目的や経緯について官邸や自民党などに説明することなく進めたため“不評”を買った。
これまで以上に難しい舵取りが迫られる
決定的だったのが、10月11日に発表したNHKの経営計画(2021〜2023年度)の修正案をまとめる際のことだ。
以前から官邸や自民党は地上契約と衛星契約ともに1割値下げするようNHKに求めていた。しかし、両契約を値下げすると1000億円程度の減収となることから前田会長はこれに反発し、衛星契約のみの引き下げで話をまとめようとした。受信料の引き下げは、総務大臣経験者でもあった菅義偉前首相の肝煎りの政策。そのため自民党総務族はNHKの修正案に猛反発し、最終的に両契約の引き下げをのませた。
前田会長本人は「『まだ改革が道半ばだ』と2期目も務めるつもりだった」(NHK関係者)が、値下げをめぐる経緯もあり、嫌気が差して退任に傾いたという。12月1日の会見では「私みたいに高齢者が残ると(改革が)完全に逆行する」として続投を否定した。
紆余曲折を経て決まった新会長。NHKに対してはインターネット事業の拡大について「業務の肥大化」批判が高まっているほか、受信料契約件数の大幅減少といった事態も起きている。次を託された稲葉氏は、これまで以上に難しい舵取りとなりそうだ。
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