NHKの次期会長が「日銀出身者」に決まった事情 前田会長に近しい人物は「ノー」で急転直下

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NHKの社屋
2023年1月から指揮を執るNHKの新会長は、現在の改革路線をどこまで踏襲するのか(編集部撮影)

NHKの経営委員会は12月5日、2023年1月24日で任期満了となる前田晃伸会長(77)の後任として、日本銀行元理事の稲葉延雄氏(72)の任命を決めた。同日、稲葉氏は「突然のご指名で大変驚いておりますが、できるだけ早く実情を把握し、公共放送の使命にふさわしい仕事をしていきたい」とのコメントを出した。

稲葉氏は1974年に東京大学を卒業後、日本銀行に入行。システム情報局長や考査局長などを経て2004年に理事に就任し大阪支店長などを務めた。現在はリコー経済社会研究所参与を務めている。

「前田氏に近い人物」に生じた拒否反応

事情に詳しいNHK関係者によれば、直前まで別の人物が最終候補として挙がっていた。前田晃伸会長の出身母体であるみずほフィナンシャルグループと親密で、個人的にも親交のある大手総合商社の元会長だった。「商社で社長や会長を歴任し、経済界のみならず幅広い人脈と知見を持っていた点が評価された」(NHK関係者)とされ、別のNHK関係者は「本人もやる気だったようだ」という。

だが、次期会長人事が表面化すると、官邸や自民党から横やりが入る。総務省関係者によれば、総務大臣経験者をはじめとする自民党の総務族が、この人選に「ノー」を突きつけた。理由は「前田会長に近い人物だったから」(総務省関係者)というものだった。

そして、声がかかったのが稲葉氏だった。打診があったのは12月最初の週末。12月6日の会見で稲葉氏が「迷っている暇なく(任命の)昨日が来た」と口にしたのもそのためだ。関係者の間では「“前田憎し”の官邸や自民党は、前田会長との距離が近いことを理由に(商社元会長の人選を)認めず、経営委員会に稲葉氏を推薦した」との見方がもっぱらだ。

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