医師が「医療は配管工事と同じ」と教える納得の訳 自然を深く知ることで治療方法が見えることも

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心臓発作は血流の流れが悪くなることで起こります(写真:lightsource/PIXTA)
北極圏、ネパール高地、アメリカ先住民居留地など世界各地で医療活動をおこなってきた現役医師のジョナサン・ライスマン氏は「体内の器官を理解するには、自然の生態系への深い知識が必要」と指摘します。『未知なる人体への旅 自然界と体の不思議な関係』の著者であるライスマン氏が、「血流の詰まりが起きる仕組み」について、自然界を通して得た豊かな知識と洞察をもとに解説します。

医師の仕事は、体液がきちんと流れるようにすること

人体の深い洞窟には、水路や暗渠が迷路さながらいたるところに走り、どの流れにも、ある特定の体液が流れている。そうした体液の流れが阻害されると疾患が起きる。

例えば尿の流れが止まると、腎臓病と尿路感染症を引き起こす。中耳からの膿の排出が阻害されると、耳の感染症になる。鼻汁が副鼻腔にたまる場合も同様だ。肺からの粘液の流れが悪くなり、肺に菌が入って炎症が起こると、肺炎につながる。

かたや胆のう、腎臓、唾液腺にできた結石や、中耳のバランスをとる部位の耳石がそれぞれの体液の流れを阻害すると、たとえようのない苦痛をもたらす。虫垂炎、憩室炎、膿瘍、便秘――どれも、人間の体内のパイプを流れる液体をせき止める詰まりによって起きている。

体液の流れは、伝統的な漢方薬の教義と共通する。気の流れがせき止められた場所に、大半の病気の原因があるのだ。西洋医学にも同じ重要な教義があることを学んだ。人間の健康は体液が安定して着実に流れることで保たれる、ということだ。医師の仕事は詰まりを取り除き、体液がきちんと流れるようにすること、医療行為の大半は配管工事のようなものなのだ。

人体の最も致命的な配管問題は心臓発作だ。心臓発作は、鉛筆の先端よりも小さな血栓が冠動脈の支流にでき、酸素と栄養を心筋に運ぶ血流をせき止めることで起きる。

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