結果的にパフォーマンスがうまくいかなかったときも、自分の内側で何をしゃべっていたのかを問いかけていくと、見えてくるものがあります。物事がうまくいったときと、いかなかったときで、どうチャッターが違ったのかを探っていくのです。
感情が高まったときは、自分の内側で起こっていることの感度も高まりますから、そのとき、何が起きていたかをしっかり振り返ってみると、さらにはっきりしてきます。
自分の中に「良いコーチ」を持とう
コーチングは、その方が持っている前提を崩して、新しい行動をとっていけるよう、変容を起こすことを目的として行います。
長い間、成功体験を積んでこられた方は、自分の中に「こうすればうまくいく」といった成功の法則、前提があります。その前提をベースにして、ルーティンが生まれ、同じことを繰り返します。それがうまくいっているときはいいのですが、環境の変化によってこれまでのやり方が通用しなくなることもあります。つまり、変化する環境に対応するには、行動を変える必要があるのです。
そのためには、自分の中の前提を認識して、それを崩し、突破しなければなりません。成功者であり続けるためには、その挑戦をやらなければならないのです。
また経営者自身が、自分の周りのメンバーや管理職に対して、前提を崩し、突破させられるかどうかも重要です。
そこで大切なのは、「主体化」です。主体化とは、動的なプロセスです。「いま私は主体的になりました」というものではありません。組織の中で、自らが変革を起こしていく主体として常にバージョンアップしている状態、そういう状態になるプロセスが「主体化」なのです。
ですから、コーチングを受けているときだけではなく、自分の前提はどこにあるのか、どう変わる必要があるのかを、定期的に自分自身で確認できるようになっていくことが重要です。
『チャッター』に書かれていますが、要するに、頭の中のおしゃべりは自分の中にコーチがいるようなものなのです。それが良いコーチなら、良いパフォーマンスにつながりますが、自分に危害を加えるモンスターではコーチの存在の意味がありません。
本書は、自分の中に起きている言葉に意識を向け、自分の感情やパフォーマンスが変えられるのだということに対して、気づきが起きるように書かれています。
自分の中のコーチを、いかに良いコーチにできるかということ、そこに多くの人に気づいていただけたらと思っています。
(構成:泉美木蘭)
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