エプソン"大容量プリンタ"がヒットしたワケ 「新興国用プリンタ」を次は先進国へ

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縮小

改造品は安くて大量印刷が可能なものの、印刷精度が悪く故障が多い。結局頻繁に買い替えなければいけないうえに、ビジネス用途だと故障している間業務が止まるのは不便ということで、純正品のニーズは高かったのである。改造品が出回っていたころに15倍程度あった純正品と非純正品間の価格差も、大容量モデルでは1.5倍~2倍まで縮小。結果として純正品使用率も向上した。

本格的にブレイクしたのは2012年。理由の一つは、販路が順調に増えていったことがある。2010年度には4カ国だった販売国は2011年度に約30カ国、2012年度には約90カ国に拡大。現在では130カ国以上に広がり、それに併せて販売数量も伸びている。もう一つは性能面。2012年に投入した新製品は初期モデルと比べて印刷速度が2~3倍に、耐久性も2倍となった。ビジネス用途として十分な性能を確保したことにより一気に需要が膨らんだ。 

欧州でも販売開始

そして、現在取り組んでいるのが先進国への展開だ。

手始めに2014年度から欧州で本格的に販売を開始している。開始して間もないが、反応は上々という。しかし、新興国では既存のビジネスモデルが機能していなかったため、事実上ノーリスクでの進出だったのに対し、先進国ではインクの純正品率も高いため、自社の既存機種と食い合うおそれがある。

だが、それでも先進国進出には意義があるという。「収入が入るタイミングに時差があるだけで、プリンタ1台あたりの利益はどちらでも同じ。大事なのは使い方の選択肢を提供して、トータルの販売台数が伸ばすこと」(久保田事業部長)だとしている。次の一手として米国、そして日本への展開も「当然検討している」(久保田事業部長)。

今後の行く末を占ううえで気になるのはやはり競合の出方だ。大容量モデルは現在エプソンのみが販売しているため"独り勝"状態となっているが、キヤノンやブラザー工業といった競合が参入してくれば、これまでのようにはいかない。これに対してエプソンは、「他社に比べて性能面で優位性があるという自負はあるが、かといって他社もやって出来ないことではない。参入してこないのは意思決定に時間がかかっているからだろう。だが、仮に参入してきたとしても最終的に選ぶのはお客様。このまま勝っていけるように努力していきたい」(久保田事業部長)。

現在、大容量モデルはプリンタ市場全体の7%程度のシェアで拡大余地は十分。前途洋々ではあるが、エプソンが我が世の春を満喫し続けられるかどうかは、先進国での成否や競合の出方にもかかっている。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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