エプソン"大容量プリンタ"がヒットしたワケ 「新興国用プリンタ」を次は先進国へ
インクジェットプリンタ大手セイコーエプソンの快進撃が続いている。新興国向けの「大容量インクタンクモデル」の売れ行きが好調で、2015年3月期の売上高は前年同期比8%増の1兆0900億円、事業利益(営業利益から年金関連の特殊要因を除いた数字)は同16%増の1050億円に拡大する見通しだ。
大容量インクタンクモデルは読んで字のごとく、通常のインクカートリッジの変わりに機体側面に大容量のインクタンクを設置したプリンタだ。通常タイプとの最大の違いは、ビジネスモデルにある。大容量タイプは価格が通常品の2~3倍するが、インク単価は10分1程度。つまり、従来の「インクで儲ける」ビジネスモデルの逆を行く。
「改造品」の蔓延に対抗
2010年に発売以来、順調に売り上げを伸ばしており、今期の販売台数は420万台に達するとみられ、エプソンにおけるプリンタ販売台数の3割を占める公算だ。特にインドネシア、フィリピン、中国で伸びているという。2010年3月期の同社の営業利益が182億円で、そこから利益が急成長したことを考えると、大容量プリンタの収益への貢献度は大きいと想像できる。
現在、大容量モデルを販売している大手プリンタメーカーは、セイコーエプソンだけ。が、こうした機種は実は「もともとあった」(久保田孝一取締役プリンター事業部長)という。
新興国では、通常の個人向けプリンタをビジネス用途で使う事が多い。その際、大量印刷に対応するためにインクカートリッジにチューブを繋ぐなどして改造するケースが後を絶たなかった。そうなると、使われるインクは非純正品となり、インクで儲けるビジネスモデルは崩壊。対策に頭を悩ませていた。
こうした事態を受け、「大容量モデルに需要があるなら、いっそ純正品として出してしまおう」ということで開発が始まった。最大の懸案事項が価格。本来インクで回収するはずの収益を売りきりで得ようとすると、通常の2~3倍の価格設定が必要となった。
2010年にインドネシアで初投入する際には「この価格で売れるのか」」いう声も上がったが、出だしは順調だった。
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