「今の仕事、自分に向いてる?」悩む人へ"答え2つ" 「キャリア論の第一人者」が教える"大事な視点"

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「仕事の向き不向き」を判断する2つめは、自分の「勝負能力」を活かせる仕事であるかどうかです。

その人の個性である「内的動機」を活用した能力発揮を、私は「勝負能力」と呼んでいます。自分の「強み」といってもいいでしょう。

自分の「勝負能力」をしっかりいまの仕事に活かせているか、改めて確認してほしいと思います。

人の「内的動機」は単一ではなく、複数の側面を持っています。それと同じで、自分の「勝負能力」も1つではなく、2つ、3つと持つことが重要なポイントになります。

「勝負能力」を使って仕事をすれば、仕事は「主体的」「自律的」になりやすいものです。そうすると、自ずと成果も上がりやすく、「やりがい」も感じやすくなります。

それに加えて、ひとつの組織レベルで考えても、さまざまな「勝負能力」を持つ者同士が同じ職種につくことで、組織が活性化します

逆に、同じような特性を持つ人ばかりが同じ職種につけば、企業における機能の多様性が奪われ、社会の変化についていけなくなるリスクが高まります。

もちろん、自分が持つどの「内的動機」を使っても、その職務で成果を出すことができないこともあるでしょう。そのとき初めて「その仕事は向いていない」ということになるのです。

そうなったら割り切って、他のことにチャレンジする切り替えも必要になります。

独学で「自分らしい能力」をさらに伸ばすのが大事

漠然と「自分に向く仕事」を探し悩むのではなく、また最初から「自分に向く仕事」があるわけでもなく、自己分析を通じて「スキル」を身につけ、「自分らしい能力」を発揮することで、結果としてそれが「向いている仕事」になっていくのです。

たとえば、一見内向的な人でも、「顧客の話を聞く」「誠実に対応する」といった「内的動機」があれば、それを磨くことで、一流の営業パーソンになれるでしょう。

このように、「自分に向く仕事」は、自身の「内的動機」と「勝負能力」を活かせるかどうかが鍵になります。「〇〇だから、〇〇に向いている」と短絡的に判断することはできないことが、おわかりいただけたのではないかと思います。

むしろそれより大切なのは、自分の「内的動機」を再確認しつつ、「勝負能力」を強化し、多様化させていくことです。

そのために必要なのが「独学力」です。「独学力」で自分の「勝負能力」を高めていくことが「自律的なキャリア形成」につながり、結果として「自分に向く仕事」につながっていくのです。

自分の「勝負能力」を意識し、「どうしたら、それを伸ばすことができるか」を考え、学び続ける。そうやって「学び」を続けながら、自身の「勝負能力」をさらに活かせるチャンスをつかむ

その「独学を起点とした好循環」を回すことで、みなさんが仕事を人生を切り開いていけると、長年「キャリア論」を研究してきた著者として、強く確信しています。

高橋 俊介 慶應義塾大学 SFC研究所上席所員、キャリア論の第一人者

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たかはし しゅんすけ / Shunsuke Takahashi

1954年東京都生まれ。東京大学工学部航空工学科を卒業後、日本国有鉄道に入社。プリンストン大学工学部修士課程を修了し、マッキンゼー・アンド・カンパニ-東京事務所に入社。1993年に世界有数の人事組織コンサルティング会社である米国ワイアットカンパニーの日本法人ワイアット株式会社(現ウイリス・タワーズワトソン)の代表取締役社長に就任。社長退任後は、個人事務所ピープルファクターコンサルティングを通じ、コンサルティング活動や講演活動、人材育成支援等を行う。2022年4月より慶應義塾大学 SFC研究所上席所員。キャリア形成、人材マネジメント、リーダーシップ、働き方改革などに確かな知見を有し、本質を見抜く目に定評がある。

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