「成功体験」後の経営判断が本当に難しい深淵理由 日本企業の6ケースから学ぶ首位奪取の戦略

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ここでのケースは、いずれにおいても新首位企業が新世代技術で攻める傍らで、旧首位企業が旧世代技術を守りに出ることから、逆転が起きている。旧首位企業が、あたかも何かに縛られているように見えるところが興味深い。

■凡庸な変化は見送る勇気を

この呪縛は、クレイトン・クリステンセンが唱えた「イノベーターのジレンマ」とは別物である。本書でいう呪縛は、過去に築き上げてきた資産に縛られる効果を指しており、ジレンマほど込み入った話ではない。

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資産の保全価値が余りに大きいため、新技術に挑戦するオプションが非合理となってしまう。または、専守防衛に徹し、一定の確率で首位を譲るコースが合理的となってしまうのである。

ここでは調査対象としていないが、防衛に成功した事例も少なくないと思われるので、ここでは旧首位企業の経営判断に疑義を挟むことは差し控えた。

攻める挑戦者の視点から言うなら、立ち向かう相手が強ければ強いほど、呪縛状態に持ち込める可能性が高くなる。そういう相手に狙いを定め、好機の到来を静かに待つのも悪くなかろう。

結果を急ぐと何でも好機に見えやすいので、凡庸な変化は見送る勇気を持つことが肝要である。

三品 和広 神戸大学大学院教授

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みしな かずひろ / Kazuhiro Mishina

1959年生まれ、愛知県出身。一橋大学商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。米ハーバード大学文理大学院博士課程修了。同大学ビジネススクール助教授、北陸先端科学技術大学院大学助教授などを経て現職。著書多数。経営幹部候補生のために、日本企業のケース464事例を収録した『経営戦略の実戦』シリーズ(全3巻)が2022年5月に完成した。近著に『実戦のための経営戦略論』

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