
日本企業はなぜ低収益なのか。5つのポイントから、利益について考えます(写真: shimi/PIXTA)
経営戦略を担う幹部候補生のために、日本企業を題材に累計464のビジネスケースを集めた『経営戦略の実戦』シリーズ(全3巻)がついに完結した。
高収益事業を創り上げた先人たちは、どのような挑戦をしたのか。そこから私たちが学べる教訓は何か。151の成功ケースと101の失敗ケース、計252ケースを取り上げたシリーズ第1巻『高収益事業の創り方』から、私たちが見誤りがちな「利益」の考え方について取り上げる。
日本企業のアキレス腱:利益率
『経営戦略の実戦』シリーズの第1巻は、利益率をターゲットとする事業戦略を取り上げる。拙著『戦略不全の論理』が明らかにしたように、日本企業のアキレス腱はここにある。
本巻では並外れた利益率の出所を解明することにより、高収益事業の立ち上げ方、および既存事業を高収益化する方法を示していく。
ここではまず、事業利益とは何かを考えたい。
肝心な事業利益の意味を取り違えたままだと、つまらない疑念が頭をもたげかねないからである。5つのポイントを取り上げよう。
「優良企業」の多くの内実は「優良事業」
1点目は企業と事業の区別である。俗に言う「優良企業」は、実は「優良事業」と言い換えたほうが適切な場合が多い。
たとえばトヨタ自動車も、確かに自動車事業は優良だが、自動車に次いで手を着けた住宅事業のほうは業界2番手グループから抜け出せず、ずっと苦戦を強いられた。
花王にしても、石鹸・洗剤事業は盤石だが、紙おむつ事業ではユニ・チャームの快走を許し、フロッピーディスクは無残に敗退した。
あらためて振り返ってみると、優良なDNAを受け継ぐエクセレント・カンパニーなど、これまで存在した例があるのかどうか疑わしい。
あるのは優良な戦略だけで、その戦略は事業、そして人に宿るものなのである。
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