最後に、ニトリの安全性を調べてみましょう。貸借対照表(4~5ページ)から自己資本比率を計算しますと、76.7%。流動比率は173%ですから、こちらもかなり高い水準です。
「負債の部」を見ると、短期借入金と長期借入金あわせて約100億円の有利子負債を抱えていますが、安全性には全く問題のない借入れ規模です。
現預金は239億円持っており、これは月商の約0.7カ月分にあたります。あまり高い水準ではありませんが、店舗の開発に積極的に投資していること、在庫の回転が速いこと、日銭が入ってくる商売ということを考えると、この程度の現預金でも十分回ります。
社長解任騒動は、父娘の確執が表面化しただけ?
大塚家具のビジネスモデルは、今も90年代と変わっていません。取り扱う商品は基本的に高額品が多く、お店に入るとそれぞれのお客さまに担当者がついて商品説明をするというやり方を貫いています。他社よりワンランク上の家具店、という位置づけです。これが、勝久会長が進めてきたスタイルです。
一方、久美子社長は、「もうそんなビジネスモデルでは古い。他社に倣って、お客様が自由に選べるような形にすべきだ」と言い始めました。確かに業績の推移を見ていると、ビジネスモデルが古くなりつつあることは否定できない事実と言えるでしょう。
ただ、それが社長解任騒動にまで発展するというのは、理解しがたい話です。経営方針の違いによって、社長の解任を株主総会で問うというのは、いかがなものでしょうか。私も、社外役員をしている会社が何社かありますが、戦略上の違いでここまでもめるケースは見たことがありません。
父と娘、どちらの経営方針が正しいかは誰にも判断できません。ならば、大塚家具は全国に16店舗も展開しているわけですから、先にも述べたように、一部の店舗で、社長が考えるやり方を試験的に行えばよいだけの話です。わざわざ株主総会にかける必要はありません。
ここからはあくまでも私の推測ですが、元々、違うところで親子の確執があったのではないでしょうか。それが経営という場で表面化してしまったというのが実状なのではないかと思います。
多くの会社を見てきましたが、親子間というのは、他人同士よりも難しい問題が生じることも少なくありません。だれか、親しい人が間に入って、早く親子間の和解をしたほうが良いと思います。このままでは、短期的な株主には良いかもしれませんが、企業の価値が下がってしまう懸念が強いと私は思います。お客さまのイメージも悪化します。
いずれにしても、これまでのビジネスモデルのままでは、業績は改善しない可能性もあり、また、ごたごたが続くと、さらに業績は悪化する可能性が高まります。今後、どのように、この問題が解決するのか、さらにはどのような戦略を打ち出していくのか、株主総会の行方とともに注目したいところです。
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