大塚家具とニトリはどこで明暗が分かれたか 社長解任騒動の背景に何があるのか

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ところが、リーマンショックが起こった2008年を境に、急速に落ち込みはじめます。同年の売上高は668億円、営業利益は12億円でした。以降、業績はほぼ回復することなく、先ほど説明した現在の状況に至ります。

安価な家具チェーンにシェアを奪われた大塚家具

ちなみに、後ほど分析するニトリの業績は、リーマンショック後も伸び続けていました。景気の悪化によって、消費者が低価格商品を求める傾向が強まり、そのニーズにうまく応えたのです。

高級路線で伸びてきた大塚家具は、その点で遅れをとりました。ニトリやイケアなどの安価な家具チェーンにシェアを奪われてしまったのです。その点で、戦略転換を模索するのは、当然のことだとも言えます。ただ、店舗ごとの収益力も違うはずですから、すべてを一気に新たな販売方法にするのが良いかは、十分に考えなければならないところです。先にも述べたように、業績の悪い店舗の一部をまず、実験的に新方式に転換するのが常道だと考えます。

ただ、大塚家具は、財務内容が抜群にいいのです。貸借対照表(7~8ページ)を見てください。

中長期的な安全性を示す「自己資本比率(純資産÷資産)」は、74.2%。小売業では15%あれば安全だと判断されていますから、同社はかなり高いと言えますね。

短期的な安全性を見るための「流動比率(流動資産÷流動負債)」も318%あります。一般的には120%あれば安全水域ですから、こちらも非常に高い水準です。

さらには「負債の部」を見ると、有利子負債が全くありません。現預金も月商の2カ月分以上を持っていますから、とても安全な水準です。財務内容という面では、超優良企業だと言えるのです。

その理由は、「純資産の部」を見ると分かります。「利益剰余金」が280億円も積まれていますね。これは利益の蓄積ですから、昔、かなり儲けたということが分かります。これは、先ほども説明したように、リーマンショック前までは、利益が大きくあがっていたことによります。

ちなみに、大塚家具は業績が芳しくないにも関わらず、配当を2倍かそれ以上に増やすと言っていますが、それは「利益剰余金」という豊富な原資を持っているからできるわけです。

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