森トラスト、雅叙園を5カ月で転売した舞台裏 "2014年の目玉物件"を電光石火の売却
特に取引額を押し上げたのが、外資系法人による投資だ。国内不動産の買い主業種別で見た「海外の企業・ファンド等」の割合は、2013年の8.2%から2014年は19.4%に急上昇している。
シンガポール政府投資公社(GIC)は昨年10月、東京駅前の複合ビル「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」を推定1700億円もの高値で取得し、市場の話題をさらった。今年に入ってからも、マレーシアの公的年金である従業員退職積立基金が三菱商事と組み、首都圏の五つの物流施設を取得している。
日本の不動産は円安で世界的に割安感が出ているうえ、オフィスビルの空室率も改善基調にある。長期保有を前提に雅叙園に出資したラサールは「都心の大型優良物件は価格に安定性があり、賃料も上昇する余地がある」(日本法人の奥村邦彦・執行役員)と、日本への投資に安心感があると強調する。
膨らむバブルの懸念
円安の追い風は不動産投資だけではない。増加する訪日外国人の需要を取り込むべく、森トラストはホテル事業も強化する意向だ。
3月23日には、京都・嵐山に高級旅館「翠嵐ラグジュアリーコレクションホテル京都」を開業。奈良にも国際級のホテルを誘致する計画だ。
とはいえ、大型物件に海外ファンドが群がる様は、日本の不動産市場がバブル期に突入したことの表れかもしれない。「(ミニバブルと呼ばれた)2007年ごろの状況に似てきた」(不動産情報サービス大手幹部)と指摘する向きもある。時流に乗った成長戦略を描く森トラストにも、攻守のバランスが問われる局面が早晩訪れるかもしれない。
(「週刊東洋経済」2015年3月21日号<16日発売>「核心リポート02」を転載)
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