大手会計事務所PwC(プライスウォーターハウスクーパース)のヨーロッパ部門で人事責任者を務めるピーター・ブラウンは2021年3月、自社の社員調査の結果を私に教えてくれた。その調査によると、回答者の40%は、「5年以内に自分の現在の仕事が時代遅れになる」と考えていた。
その一方で、「この1年間で自分のデジタルスキルが向上した」と答えた人も40%に上り、「新しい世界に適応する自信がある」と述べた人も80%いた。
社員が「自分にはできる」という感覚を抱いていて、みずからのスキルに自信を持っていることは、PwCの幹部チームにとって好材料と言える。しかし、別の調査によれば、社員の60%以上は、「自分の仕事が時代遅れになる」ことを恐れていて、自分には「変化に適応するスキル」がないと感じているという。
自動化で生じたアップスキリングの時間
ヒューマニスティック心理学の立場に立つ私は、「ほとんどの大人が学習とスキル開発への意欲を持っているもの」と考えている。
私が思うに、役職に関係なく、たいていの人は、目の前の課題を乗り切り、将来の激変によりダメージを被ることを避けるために、スキルを高めたいと思っている。
その目的を達するために、人々は(ときにはかなりの)時間と資金を費やして、現在の職でのアップスキリングに取り組んだり、「もっと高給の好ましい職に就ける」と期待してリスキリングに精を出したりする。人材市場調査会社バーニング・グラス・テクノロジーズのマット・シーゲルマンCEOは、私にこう語っている。
「人々は上昇したいという抗しがたい欲求と、それを成し遂げる高い能力を持っています」
それでは、未来に向けて最も大きな価値を持つのは、どのようなスキルなのか。
機械は一般的に、人の感情を感じ取ったり、周囲の状況を察知したり、信頼関係を築いたりすることは得意でない。機械の活用が進むのは主としてアルゴリズムによる相関関係の発見にとどまり、一部の業務に欠かせない人間の長期的な想像力も機械が代替することまでは考えにくい。
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