筆者の私が共同座長を務める、未来の雇用に関する世界経済フォーラムの報告書でも指摘しているように、基礎的な人間的スキルを習得することが極めて重要だ。共感する能力、文脈を読む能力、コラボレーションの能力、創造的な思考をする能力などのことである。
基礎的な人間的スキルの重要性は、リテール銀行の支店で働く人たちを見れば明らかだ。今や、支店の窓口ではなくATMで現金を引き出し、オンラインバンキングで取引明細書を入手するのが当たり前の時代になっている。
銀行員たちは、自動化で生まれた時間的余裕を生かしてアップスキリングに努め、顧客への働きかけを積極的に行い、顧客にさまざまな自社サービスを売り込むようになった。このような「人間らしい」業務を行うためには、高いレベルの対人関係スキル、たとえば共感力、聞く力、判断する力が必要とされる。
学習テクノロジーを活用したアプローチ
こうした基礎的な人間的スキルの習得は、なかなか容易ではない。分析や意思決定や論理的判断などの認知的スキルを育む方法がある程度明らかになっているのに対し、基礎的な人間的スキルを身につける方法はあまりわかっていない。
人が新しいスキルを身につける過程は、認知的スキルに偏っているのだ。この点は、私が10年以上ずっと考えてきた問題だ。
私の考えでは、基礎的な人間的スキルを育むことが難しい原因は、3つの障害にある。それは、「学校での教育プロセス」「家庭でのテクノロジーの使われ方」「仕事におけるストレスの大きさ」だ。
教育プロセスと家庭環境に関して企業にできることは少ないかもしれないが、仕事のストレスに関しては、可能なことがたくさんあるかもしれない。
ほかの人の立場に立ってものを考える能力など、基礎的な人間的スキルは多くの職で極めて重要だが、その種のスキルを育むのは非常に難しい。
どうすれば、そのためのスキルを育めるのか。テクノロジーを活用した研修を手がけるマージョン社のマーク・アトキンソンCEOは、こう述べている。
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