シャンシャン中国に送るエキスパート集団の正体 コロナ禍で延期、来年2~3月に直行便で四川省へ

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ほかには、人工授精という方法がある。1980年代に中国から上野動物園に来たホァンホァン(歓歓)とフェイフェイ(飛飛)は相性が悪く、人工授精で3頭の子どもをもうけた。

人工授精の「相手」は、同じ動物園のパンダに限らない。アメリカやカナダの動物園は、中国やアメリカの他の動物園にいるパンダの精子を使って、人工授精をしたことがある。ただ、これら人工授精をしたパンダは、いずれも中国から来たパンダなので、中国国外で生まれたシャンシャンと条件が異なる。

しかも人工授精は麻酔を使うため、体に負担がかかり、危険も伴う。現在、上野動物園は動物本来の姿である自然交配を目指している。シャンシャンは同園において、自然交配で生まれ、順調に育った初めてのパンダだ。

オランダやマレーシアのパンダも渡航か

シャンシャンが去ったら、東園パンダ舎からパンダがいなくなる。西園にいる双子(シャンシャンの弟妹)は、親離れしても、東園に移る予定はない。東園パンダ舎は、いずれ取り壊して活用することになるだろうが、どう再整備をしていくかは今後、都が検討する。シャンシャンが愛用しているハンモックや寝台の扱いも気になるところだ。

ガラスに貼られた好物のリンゴをつかむシャンシャン。この部屋で過ごすのはあと数カ月。2022年10月17日。画像は動画からの切り出し(画像:公益財団法人東京動物園協会)

コロナ禍で中国行きが延びていると見られるパンダは、オランダやベルギー、マレーシアなどにもいる。シャンシャンが中国へ行くメドがついたことで、ほかのパンダの中国行きも動き出す可能性がある。

アドベンチャーワールドは、パンダの中国行きについて明らかにしていないが、2022年12月2日で8歳になる雌の桜浜(おうひん)と桃浜(とうひん)、9月18日で6歳になった雌の結浜(ゆいひん)は、シャンシャンより年上だ。王子動物園の雌のタンタン(旦旦)は繁殖目的ではないが、2022年12月末に中国行きの期限を迎える。タンタンは高齢で病気を患っているため、同園は今後の日程調整を含め協議中だ。

コロナ禍が世界に広まってから渡航したパンダは、2020年11月にカナダから中国へ渡った2頭と、2022年10月に中国からカタールへ渡った2頭のみで、4頭とも中国生まれ。シャンシャンは、中国国外で生まれて、コロナ禍に渡航するパンダのトップバッターになる可能性がある。旅立つシャンシャンの健やかな成長と幸せを願いたい。

中川 美帆 パンダジャーナリスト

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なかがわ みほ / Miho Nakagawa

福岡県生まれ、早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)

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