シャンシャン中国に送るエキスパート集団の正体 コロナ禍で延期、来年2~3月に直行便で四川省へ

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シャンシャンを中国へ送り届ける業務は、2020年10月2日の入札で阪急阪神エクスプレスが手がけると決まった。同社は50年前のパンダ初来日以来、上野動物園と神戸市立王子動物園のすべてのパンダの輸出入にかかわっているエキスパートだ。

2020年時点の業務内容は、①上野動物園から成田空港までの陸上輸送、②成田空港での通関事務、③空港貨物エリアでの動物園関係者による動物確認のアレンジ、④成田空港から成都の空港までの航空輸送手配、⑤成都の空港(もしくは上海の空港)での通関事務、⑥成都の空港でのパンダの受け渡しのアレンジ――などとなっていた。

「上海」とあるのは、成都直行便が再開されなければ、上海で乗り継ぐ予定だったためだ。これには当時、「シャンシャンのために直行便で行かせてあげて」という要望がファンから上がった。

上野動物園を運営する東京動物園協会によると、2023年2~3月のシャンシャンの中国行きも阪急阪神エクスプレスが手がける。2020年の入札における同社の落札額は181万3912円(税抜き)だったが、その後の燃油高騰などを踏まえ、金額は変更する。

上野動物園からシャンシャンに同行する専門家は飼育係か獣医師、あるいはその両者と見られるが、現時点では未定だ。中国到着後は、ワクチン接種歴に関係なく、指定施設で隔離となる。隔離期間は2020年の14日間から段階的に短縮され、現在は「5日間+自宅隔離3日間」とされる。

仮に、この条件のまま例外が適用されなければ、シャンシャンに同行した専門家は、直行便なら成都、乗り継ぎ便なら乗り継ぎ地で隔離される。シャンシャンとは離れ離れになり、飼育施設まで同行できない。その場合、上野動物園の専門家は、日本から同行する人とは別の人が、シャンシャンより早く中国に入国しておくという方法もありうる。

カタールに来たパンダは四川方言に反応

上野動物園の動画で「ちょっと繊細なところのあるパンダ」と紹介されているシャンシャン。果たして中国での新居や飼育係に馴染めるだろうか。シャンシャンは上野動物園の東園パンダ舎で暮らしているが、2022年7月4日に初めて引越しを経験した(参照:『上野の「シャンシャン」初の引越しを追ってみた』)。

このときは、人間の足で徒歩10分ほどの西園パンダ舎へ移り、7月11日に東園へ戻った。するとエサを食べる量が減った。物音に反応して食べるのをやめることもあり、落ち着かない状況が続いた。

上野動物園は、移動に加え、西園パンダ舎での慣れない生活の影響があると判断。7月20日からの公開再開を延期した。その後、移動前の生活リズムをおおむね取り戻したことから、8月2日に公開を再開した。

中国に着いたら、最初は言葉にも違和感を覚えるかもしれない。2022年10月に四川省からカタールへ来たパンダは、四川省の方言で呼ばれると、遠くにいたのに、すぐやって来た。

現在、上野動物園のジャイアントパンダの飼育係は8人、獣医師(パンダ以外も担当)は4人。人手のやり繰りが難しいかもしれないが、シャンシャンが中国に慣れるまで、しばらく現地にとどまる人もいるかもしれない。シャンシャンが落ち着けるように、上野動物園で愛用している竹筒などの遊具を中国へ一緒に持って行く可能性もある。

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