フランス人にとって「お酒を飲む時間」が大事な訳 お酒だけでなく、人との時間が愛おしい

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実際、フランスではさまざまな場所やシーンでお酒が飲まれてきました。例えば、かつては多くの会社でランチタイムにカフェテリアでワインを飲むのは普通のことでした。食事にはほとんどの場合、ワインが付いてくるのですが、これが高級ワインではないので、水で割ることもありました。例えば、自動車大手ルノーでは1990年代の終わりまで社内のレストランでワインを飲むのが普通でしたし、学校の食堂でも1956年までは食事と一緒にワインを飲むことができたのです。

アルコールと車の運転についても、長い間、何の制限もありませんでした。私自身、学生時代、パーティーに行くのにときどき父の車を借りていたのを覚えています。ですが、今は0.5グラムが限度です。特にサルコジ元大統領以降、飲酒運転は非常に厳しく取り締まられるようになりました。

日本はご存知の通り「飲んだら乗るな」ですが、フランスでは、ワインやアルコール企業によるロビー活動が盛んです。特に田舎では車が必要ですし、食事と一緒にワインを飲む習慣もあります。フランスにおいてワインは歴史的にも特別な存在で、その伝統は非常に大切にされているのです。

お酒とともに仲間と楽しい時間を過ごす美学

フランス人シェフがフランスの 「art de vivre (アール・ド・ヴィーヴル=生活美学)」を定義するときによく使う言葉で、「convivialité」というユニークな言葉があるのですが、これは 「いい仲間との楽しい時間を過ごす美学」という意味です。

フランス人は実際、ディナー前のちょっとした飲み時間、「アペリティフ(またはApéro=アペロ)」の時間が大好きです。これはまさに仕事とプライベートの切り替えの時間なのです。カフェで飲むこともあれば、自宅で友人と飲むこともあります。

フランス人は好んで友人や家族を自宅に招くのですが、アペロであれば前もってメニューを考えたり、準備しなければならないディナーより気軽です。ワイン1杯から始まり、1時間で終わることもあれば、その後食事を交えて3時間くらい話しながら食べたり飲んだりすることもあります。アペロの後に解散することもあれば、その後に映画館や劇場、コンサートに行くこともあります。アペロはその自由さや、柔軟性の高さから特に若い人に人気があります。

アペロには、一般的には、ワインやチーズ、シャルキュトリーなどを持参するのが普通ですが、田舎でアペロに誘われて驚いたことがあります。近所の人が「ちょっとアペロでも」と言うので、「アペロだけながら」とお邪魔したところ、3、4時間にわたっていろいろな種類のお酒や料理が少しずつ出てきたのです。これを 「アペリティフ・ディナトワール」と呼びます。

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