「若者よ、もっと酒を飲もう!」。少し前になりますが、国税庁が打ち出した若者の酒類需要喚起の対策「サケビバ」が海外で話題となっています。というのも、フランスのように若者の飲酒をいかに減らしたらいいのか対策を考えている国にとって、このニュースはとても衝撃的で、そして面白くもあったからです。この話が報道されると、多くの人が私にこのニュースのリンクを送ってきたほどです。
「サケビバ」は「お酒のこれからを考えよう」と国税庁が20〜39歳を対象に始めたビジネスコンテストで、若年層の酒類需要喚起のプロモーションなどを考えるものでした(応募は9月9日で締め切り)。
お酒を飲まなくなった日本の若者
日本の若者は、親や祖父母に比べてお酒を飲まなくなっている、というのは事実です。国税庁の報告によると、成人1人当たりの酒類消費量(年間)はピーク時の1992年には101.8リットルだったのが、2020年にはピーク時の75%程度に減っています。その背景には、「酒害」「高齢化」「ライフスタイルの変化」「健康志向」……といったさまざまな理由があります。
コロナ禍を経て、「酒離れ」の傾向は加速しているかもしれません。テレワークの普及により、日本人が仕事帰りに同僚などと飲みに行く機会は以前に比べて減っています。また、若年層ほどアルコール離れが顕著のようで、厚労省の調査によると、20代で飲酒習慣がある人は、2019年の調査では7.8%(男性12.7%、女性3.1%)、30代でも17.2%(男性24.4%、女性11.1%)でした。
一方、フランスでは特に若者の間では、つねにアルコールの商品を抑制する広告キャンペーンが行われています。若者の飲酒量が減ることは、政府にとっても喜ばしいことなのです。フランス人の飲酒量は、1人当たりの飲酒量、年間飲酒量とも世界トップクラスです。1960年以降、消費量はかなり減っていますが、それでも上位10カ国に入っています。
最近は変わってきましたが、フランス人は昔からお酒を飲む習慣がありました。パリの有名なサンラザール駅の壁には、長年、ルイ・パスツールの言葉が大きな文字で印刷されていました。「Le vin est la plus saine et la plus hygiénique des boissons(ワインは最も健康的で、最も衛生的な飲み物である)」。
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