コロナ禍で「認知症になっている」を見逃すリスク 行動制限が悪影響、会わない間に異変気づかず

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認知症の人、特に中度~重度の人が集団で生活することの多い介護施設で問題となるのが、どう感染対策に協力してもらうかだ。なぜ感染対策が必要か、中度~重度の認知症者が理解するのは非常に難しい。認知症の入所者がマスクを外してしまう、他者と適切な距離をとれないなど悩みを抱える施設は多い。

感染対策を講じながら、入所者のQOL(生活の質)をどう維持するか、難しい対応が迫られている。第2回の調査では、回答施設の9割超が外出制限や家族との面会制限を行っていた。一方、運動などのレクリエーション活動の短縮や中止をしている割合は1回目の調査から減少。コロナ禍の長期化に伴い、メリハリのある感染対策に変更し、入所者の日常を取り戻そうと各施設が工夫を重ねている。

それでもある介護士は「面会やレクリエーションなど従来の活動を復活させつつあるが、集団感染の危険性もあり、完全にもとに戻すのは難しい」と語る。

在宅介護もコロナ禍で大きな影響を受けた。第2回の調査では、コロナ禍で「介護保険サービスの利用状況に変化があった」との回答は半数を超え、そのうち約8割が「その結果、家族が介護を行うことがあった」と回答している。

家族内で感染者が出た場合、認知症の人も濃厚接触者として一時的に介護保険サービスが停止されることもある。その場合、やむを得ず感染している家族が介護を担い、認知症の人の感染リスクを高めてしまう事例も調査ではみられた。

また、コロナ流行に伴い、介護保険サービス事業所が休業するなどして従来通りのケアが受けられなくなることもあった。その結果、家族が介護を担うため、仕事を休む、介護時間が増えるなどして、心身の負担が増している。2021年の調査では、前回と比較して、「仕事を休んだ」、介護負担のため体調不良になった」との回答が約10ポイント増加していた。

公共料金の支払い忘れがないか

行動制限の悪影響は発症前の高齢者にも及ぶ。「外出自粛によって、本来の老化のスピードよりも早く、認知機能が低下していく可能性がある。また、受診控えやコミュニケーションの減少により、認知症を発症していても周囲が気づけず診断が遅れたという話もある」と石井教授は危惧する。

特に帰省の回数が減り、高齢の両親などと直接話す機会が減っている場合は、注意が必要だ。「電話では認知機能が低下しているかどうか細かいところまで把握するのは難しい」(石井教授)といい、認知機能の低下や認知症の発症を見逃す可能性があるためだ。

認知症は早期検査、早期治療によって、症状の悪化や進行を遅らせることができる。認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)であれば、重度への発症を防ぐことも可能だ。

まず異変に早く気づくためには、日常生活で重要なお金の管理と、毎日服用する薬の管理がきちんとできているかが指標となるという。公共料金の支払いが滞っている、飲み忘れた薬を大量にため込んでいるなどは要注意サインだ。「MCIの段階では本人が機能低下をはっきりと自覚していないときもある。本人と親しい知人に様子を聞くことで、変化に気づける」(石井教授)。

行動制限がほぼなくなり、年末年始は久しぶりに実家への帰省を考えている人は多いだろう。異変に早く気づくために、帰ったタイミングで両親や親戚、周囲の高齢者の認知機能が低下していないか、気をつけるとよいだろう。

大竹 麗子 東洋経済 記者

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おおたけ・れいこ

1995年東京都生まれ。大学院では大学自治を中心に思想史、教育史を専攻。趣味は、スポーツ応援と高校野球、近代文学など。

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