相談相手は「お母さん」という若者が増える真因 友達と安定した関係を築けないZ世代の憂鬱

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出版社勤務の恵さん(24歳、仮名)は、「わからないことがあっても、距離感を覚える相手に気軽にチャットを送れない」と言う。上司や先輩への連絡はチャットやメールが中心だが、中には顔も見たことがない相手もいる。

「世代が違うから文章のニュアンスが伝わらなかったら嫌だなと。『!』を入れたほうがいいのか、『…』を使うべきか。そう悩んでいると返事に時間がかかるんです」

恵さんは近頃、友達への連絡も腰が重い。大学4年生のときにはオンライン授業になり、同級生と気軽に会えなくなった。友達とのLINEのやり取りも距離感がつかめず、遊ぶ約束をするにも、「仕事のアポ取りのような感覚になって気が重い」と言う。

そんな恵さんが何も考えずにLINEを返せる相手は、2歳上の姉くらいだ。

若手社員や大学生たちは、同僚や友達への過度な気遣いによって疲弊している。Z世代の20代の人間関係に共通する傾向はあるのだろうか。

友達に相談する人は減少

早稲田大学の石田光規教授は、「安心できる人間関係を築きづらくなった結果、相談できる相手は家族という若者が増えている」と指摘する。

内閣府のデータを基に石田教授が作成した下図は、悩みや心配事の相談相手として母親または友達を選んだ若者の比率を表す。00年代半ばから、友達に相談する人が減り、母親に相談する人が増えていることがわかる。

「昔ならお母さんに相談するのはちょっと恥ずかしいという空気があったが、今はむしろ友達に相談するほうが難しい。それだけ若い人は安定した人間関係が築けず、友達と深い話ができなくなっている。大学生はけんかをしなくなったといわれるが、学生たちにその理由を聞くと、『修復する機会がなさそうだから怖くてできない』と言う」(石田教授)

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