広がる"ごぼう抜き"抜擢人事の「功罪」 選ばれる人、選ばれない人の資質

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人事部的な視点からすれば

《若手社員にとってはチャンスなので、やる気が高まるに違いありません

とプラス面を強調してきます。確かに抜擢人事はやる気の高い若手社員に対してはうれしい傾向です。ちなみに筆者も会社員時代、管理職や事業部長などに抜擢人事された経験があります。当然ながら社内で、年功的に逆転が起きた組織のトップを任されることになります。自分なりに責任と権限の大きさに緊張しながらも意欲的に仕事に取り組んだ記憶があります。

抜擢されない人のやる気をどうするか?

ただ、振り返れば抜擢人事にも弊害はあります。それは、抜擢されなかった人に対する処遇次第で、やる気の下がる社員が増えること。社長抜擢の場合であれば、社長より年配の役員、古参の役員は

「ここは若手に任せて、潔く身を引いてください」

と引導を渡されるケースが大半かもしれません。役員ともなれば、抜擢人事がなされたときには「そろそろ潮時かもしれない」と会社を辞めることも自然と覚悟できるかもしれません。

ただ、通常の職場ではどうか? 抜擢された経営幹部と抜擢されなかった管理職が仕事を続けるパターンは普通に起こります。大企業で抜擢されなかった人を子会社に異動させるケースはありますが、それを繰り返すと子会社が抜擢されなかった人の受け入れ先として機能不全を起こす可能性が大。子会社の生え抜き社員からすれば、たまったものではありません(もちろん、子会社を抜擢されなかった人の受け入れ先に平気で活用する大企業もありますが)。

そのため、抜擢人事に合わせて抜擢されなかった管理職を一掃する会社は減ってきました。そこで、抜擢人事をする際には抜擢されなかった人材の活かし方が大事になります。

当然ながら抜擢されなかった人材が会社的に不要なわけではありません。それぞれの持ち場での役割を明確に定義して、期待した仕事を任せること。決してスポイルしたような人事はしないのが賢明です。さもないと抜擢された人に対して牙をむいてくる可能性もあります。このあたりの配慮は抜擢した責任者が心しておくべきでしょう。

さて、これからも増えそうな抜擢人事が、会社の成長に寄与するのか? 大いに注目していきたいと思います。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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