いま世界で最も注目を集める経済学者がきょう1月29日(木)、初来日を果たす。トマ・ピケティ。弱冠43歳のパリ経済大学教授だ。彼が発掘したのは貧富の差をめぐるさまざまな驚くべき事実。たとえば、米国では上位10%の富裕層が総所得に占めるシェアは、1980年の34%程度から今や50%近くの水準まで急上昇し、格差の激しかった第2次世界大戦前の水準を3~4倍も上回っているという。
日本は米国ほどの格差は広がっていないものの、富裕層がどれほどの所得を得ているのかは、庶民にはなかなか実感が沸かないかもしれない。そこで『会社四季報』(小社刊)で上場企業のさまざまなデータを保有する東洋経済から一つの具体例を紹介しよう。
東洋経済オンラインは上場企業の経営者が1年間に受け取る配当金のランキングを独自に試算した。配当とは株式会社が1年間に得た利益の一部を株主に還元するのが基本的な仕組み。赤字の場合で配当するケースもある。保有株数に応じて1株当たりの配当額を掛け合わせることで、それぞれの株主の配当金を算出できる。
大株主で配当金をガッポリ
株式を公開する上場企業では創業一族の社長が大株主に名を連ねていることが多く、庶民とはケタ違いの収入を配当金で得ているケースが見受けられる。ランキングは『会社四季報』などで東洋経済が独自に予想する1株当たり配当金を用い、原則として今後迎える本決算発表後に支払う予想配当金とした。社長名で他の上場企業に大株主として出資している金額も一部加えている。もちろん、このまま手取り収入になるワケではなく一部は税金がかかる。
1位はソフトバンクの孫正義社長。その金額は92億4840万円にも上る。ソフトバンクを世界的な企業に育て上げた孫社長の功績は大きく、配当金もケタ違いだ。孫社長は2012年3月に100億円を東日本大震災の被災地に寄付するなど、社会貢献でも話題を集めた。
2位はファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正会長兼社長(73億5593万円)、3位はポーラ・オルビスホールディングスの鈴木郷史社長(23億8176万円)などの名前が続く。10億円以上の配当金を受け取っている経営者は8人。1億円超では96人となる。参考値として併載したのが予想配当性向。配当性向とは企業が1年間に得た利益のうち、配当に回す割合であり高いほど株主に優しい企業となる。また従業員の平均年収や平均年齢も記載した。
会社によっては社長の親族や資産管理会社が大株主になっている例も少なくなく、家庭単位でみるとさらに大きい配当金を得ているケースがありそうだ。庶民が思わずうらやんでしまうほどの高収入を得ているが、それだけリスクを取って会社を興し、大きくした上で果実を得ているという見方ができる。