マーケティングの暴走憂う「神様」が説く最新理論 フィリップ・コトラーが提唱「人間中心」とは?
H2Hマーケティングは、以下の構造から成り立っている。
●H2Hマーケティングの構造
(外部配信先では図や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
マインドセットとは、人間の行動を引き起こす思考のロジックである。特定の方法で見聞きし、理解し、感じ、解釈し、伝えることにつながる心の態度である。そしてH2Hマインドセットには、人間中心、サービス志向、俊敏性、実験主義、他者視点への共感的関心などの要素がある。この芯とも言えるマインドセットがしっかりしているかどうかで、マーケティングの強さは大きく変わる。
そもそも市場志向というのは古典的なマーケティングの基礎となったマインドセットであった。それは「市場のどのポジションに到達すべきか」を考えるためには重要であったが、「いかに到達するか」を考えるには不十分であり、ステークホルダー全体を視野に入れるにも不十分であった。
現代的な、ステークホルダー全体を視野に入れた長期のマインドセットの代表例としては、ホールフーズマーケットの「相互依存宣言」がある。相互依存関係にあるステークホルダーが協働して初めて持続可能な成功を得ることができ、これがパートナーを成長させ、競争優位を育むというマインドセットである。
現代は「信用の危機」の時代
マネジメントレイヤーでコトラーが強調してやまないのが「信用」である。現代を信用の危機の時代と捉えているのだ。H2Hの信用のマネジメントでは「信用傾向」「感情的信用」「評判上の信用」「経験上の信用」の4つの信用があるが、直接コントロールできるのは経験上の信用のみであり、間接的にマネジメント可能なのは評判上の信用である。
認知→訴求→調査→購入→推奨という現代の購買サイクルにまつわるすべてのタッチポイントを注意深く設計することで経験上の信用を得ることができる。企業がつねに世論の法廷で倫理観・リーダーシップ・価値観が裁かれているのがレピュテーションエコノミーとなった現代であり、その中にあって実は重要なのが「社会が直面している最大かつ喫緊の課題」への取り組みから得られる評判と信用なのだ。
この評判上の信用を獲得すると従業員のモチベーションを高め、顧客ロイヤルティが上がり、投資家は引き寄せられ、メディアは好意的に取り扱ってくれるため、ペイするのだ。
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